人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第16回 『アラビアのロレンス』
『アラビアのロレンス』は、戦後映画を代表する名作の1つである。40代以上なら、何となく名前ぐらいは聞いたことがあるという人が多いだろう。だが、観たことのある人は少ないのではないだろうか。とかく名作とはそういうものである。だが公開から半世紀がたった今、この映画は再び、時代の焦点に触れる作品として浮上してきた。中東は石油問題を除き、長らく日本人の関心の圏外にあった。だが湾岸戦争が起き対テロ戦争が始まり、イスラム原理主義の台頭やアラブの春、シリアの内戦やイランの核問題などがトップニュースになるに及んで、中東問題はもはや無視できない国際的テーマになっている。そんな今だからこそ、『アラビアのロレンス』が面白いのである。イスラム諸国は経済的に大きな潜在力を持っている。水と油のように対立しているキリスト教文化圏とは違い、日本との間に大きな障壁はない。世界に15億以上ともいわれるイスラム教徒と付き合っていくことは、日本経済のためにもなる。イスラム研究者の宮田律氏は新刊で、日本人よ、イスラムを過剰に恐れる必要はない、と訴えている(『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』新潮新書)。