ART 日本美術家列伝 〜室町〜江戸時代前期篇 先鋭的な美意識で日本文化を変えた美術家・千利休 矢島 新氏 跡見学園女子大学 教授
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千利休は日本の文化人のなかでも抜群の知名度を誇っている。ただそれは、わび茶を大成させた偉大な茶人としてであって、美術家というカテゴリーでは認識されていないかもしれない。自らの手で作ったものといえば、裏山から切ってきた竹に開口部を切り込んだ花入れがある程度で、絵を描いたり、仏像を彫ったりしたわけではないからだ。しかし日本的な美の方向を定めたという点で、日本美術史に大きく貢献した。
いわゆる「わび茶」は利休の百年ほど前に誕生した。茶の湯の道具はそれまで完成度の高い中国製品が最上とされていたが、わび茶の開祖とされる村田珠光(1422~1502)や後続の茶人たちは、そうした完璧な品を遠ざけて、朝鮮半島や日本で焼かれた土味のする焼物を茶室に持ち込んだ。眼の革命というべきターニングポイントであった。