人材教育最前線 プロフェッショナル編 個の力を活かすことが 企業の成長をつくる
2005 年、カゴメは「強い会社」になるために大幅な人事制度改正を行った。小林崇氏は、このときの研修制度の見直しに深く関わり、様々な研修の企画立案を担当した。そこで打ち出したのが、自主性を重んじた研修制度である「自主キャリアプランの推進」だ。研修を自己研鑽の場としてとらえ、個人がやりたいことを見つけて会社がそれをサポートする。このような斬新なシステムを構築した氏が考えるキャリアとは何か。その本質について語ってもらった。
営業から採用担当へ そして人材教育担当に
採用担当者は、学生がいちばん最初に会う人であり、いわば企業の「顔」である。つまり、採用担当者の印象1つで企業のイメージが決まるといっても過言ではない。
1994 年、当時の採用担当者の熱意に感銘を受けて、カゴメへの入社を決めたという小林。入社したときから、自分も採用担当をやってみたいと思い続けてきたが、配属されたのは横浜支店の営業だった。1998 年、東京支店に異動になり、都内大手百貨店の担当として充実した日々を送っていたが、「採用担当になりたい」という目標は忘れたことがなかった。もちろん、目標を達成するための努力も怠らず、会社の自己申告制度を利用して「採用担当を任せてほしい」とアピールを続けた。
そして2001年、ついに願いが叶い人事総務部人事グループに異動。念願の採用担当者となり、新卒・中途採用計画立案と実施に携わる。
「営業の仕事も採用担当の仕事も、根本は同じだと思います。営業は商品を介して、カゴメという会社をお客様に知ってもらう。採用担当は、商品を会社に置き換えて、学生にカゴメという会社を知ってもらう。新入社員に、カゴメの魅力を少しでも伝えられればと思って努力しました」
当時はまだ中途採用が盛んではなかったので、採用と研修を1人の担当者が兼務していた。つまり、小林は採用担当になったものの、人材教育の分野にも片足を突っ込んでいたことになる。しかし、当初は人材を見極めて入社してもらうことに重きを置き、正直その後の教育まで目がいかなかった。
ところが、採用担当の世代交代を含めたグループ内の再編により、採用担当を外れ人材教育の担当になった小林は、一時期仕事に戸惑いを感じるようになっていた。
「正直、もう少し今の仕事を続けたかった。でも、ふと新入社員のことを思ったとき、自分は彼らのその後をまったく考えていなかったと気づきました。後輩が採用した新入社員を自分が責任を持って育てていく。これはすごくやりがいがあるのではないかと」
折りしも2005年度の人事制度改正に伴い、研修制度も大幅な変更を余儀なくされていた時期でもあり、小林は率先して改革に取り組んだ。
適材適所を実践するべく 自主性を養う研修を提案
カゴメは従来から長期雇用を前提として「個人の成長が、企業の成長をつくる」という考え方で経営にあたってきた。社長が提言する「適材適所」主義とは、社員自らがやりたい仕事を考え、能力に磨きをかけて「適材」となり、その力を「適所」で発揮するというもの。これは、「自主」を最大限に発揮することで、仕事を通して自己実現を図ることにつながる。「適材適所」は、「自主」を起点として、これを会社が支援することで達成される。つまり「自主活力にあふれる社風」こそ、カゴメの人材競争力の源となる考えなのだ。