能力開発優秀企業賞受賞 本賞 NTT ソフトウェア 部分最適から全体最適へ。改革の柱は「組織・人事・育成・マインド」
【受賞テーマ】
「自立と自律で自ら成長し続ける人材」の育成
赤字プロジェクトの撲滅に向け、トップの強い志のもと、短期間で経営改善を実現したNTTソフトウェア。「人材育成を機軸においた構造改革」、それが受賞対象となった。その変革の中で、社風までも変えてしまったほどの大きな取り組みを、クローズアップする。
売上好調なのに利益は赤字
その原因を究明せよ
1985 年7月、NTT ソフトウェアはNTT(日本電信電話株式会社)の100 %子会社として設立された。NTT研究所などからの移籍・出向者、わずか23名によるスタートだったが、高度なネットワーク技術とシステム構築力を基盤に、ICT 経営戦略コンサルティングからシステム構築、保守・運用までをトータルに提供するICTソリューションプロバイダーとして、大きな発展・成長が期待されるという船出だった。
設立後、NTTおよびグループ企業からの大型案件を数多く受注したことで、業績は順調に伸びていったが、売上げの大部分をNTT グループ関連が占める状況も続いていた。これは経営としては安定しているが、ビジネスの大部分がグループ内にとどまっている以上、企業としてのさらなる発展はなかなか望めない。
そこでNTT ソフトウェアでは、1998年度から一般市場へのビジネス展開を積極的に推進する方向に大きく舵を切った。結果、2000 年度の決算で、はじめて売上高500 億円突破という数字を達成する。
しかし、輝かしい業績の裏で、純利益は何と赤字に転落していた。そして赤字基調は、以後3年間続くことになる。現生産性革新センター所長の竹内氏は言う。
“部分最適”から“全体最適”へ 大構造改革断行!
「売上げはピーク、社員の質も能力も高い。にも関わらず赤字になるのは、いったいどういうことなのか……。当時、そういう疑問が誰の頭にもありました。そんな中、積極的に原因を究明し、課題解決に当たろうと行動に出たのが、2002年に副社長に就任した鈴木滋彦です。鈴木は翌年社長に就任し、今回の大改革を牽引していくことになります」
鈴木副社長(当時)は、現場の実態把握、経営データの分析、社員からのヒアリングなどを通して、徹底的に問題点を洗い出した。そして得られた結果は、「大きな2つの環境変化への対応が十分でなかった」ということだった。
1つ目は売上げ構造の変化。NTTグループなどから受注した大型案件を進める中で、社員を育て、プロジェクトマネジャーを育成していた従来の人材開発体制が、案件の小型化・短期化が急速に進んだ2000年当時の市場変化に対応できなかったのである。案件数が多くなれば、それぞれにプロジェクトマネジャーが必要になるが、短期化が進めば社員を育てる余裕はない。そのため、リーダー不足によるプロジェクトのトラブルが増えていた。
もう1つは顧客ニーズの変化だ。顧客は自分たちの課題を具体化し、どういう方法で解決していくのかという、コンサルティング&ソリューション提供を求めていたにも関わらず、NTTソフトウェアの社員は、従来の受託請負開発の姿勢から脱却できなかったと分析した。もちろん、社員の危機意識が十分ではなかったことはいうまでもない。