HRD JAPAN 2007の活用術① 人材育成企画委員会委員長 特別提言 成功の本質を探り、 「真似」ではなく真に「学ぶ」
成功事例に「学ぶ」とは何をすることなのか
今年もHRD JAPANの季節がやってくる。この大会は日本を代表する優良企業の取り組みを、効率的に聞くことができるチャンスであると言っていい。数々のケースを聞くだけでも有意義だが、これらの講演や事例発表を聞くにあたって、忘れてはならないことが1つある。
それは、「こんな取り組みがあって、こんなふうに成功したのか! よし、我が社にも導入しよう!」というだけで終わってしまっては意味がないということだ。よい事例を聞いて、モチベーションを上げるのは結構。しかし、それを持ち帰って真似するだけでは、成功することはまずあり得ない。制度にしても、新研修にしても事情は同じ。なぜなら、それはその会社であるから成功したのであって、状況が全く異なる他社に当てはまるはずもないからだ。
では、成功事例を聞くことは意味がないのか、といえばそうではない。大切なのは他社の成功事例を聞いて、その成功の本質はどこにあるのかを、深く掘り下げて追究することである。その上で自社に使えるように“翻訳”する。このプロセスが最も重要なのだ。
苦言を呈すれば、日本の学びは非常に表面的である。たとえば「ベンチマーク」という考え方も、日本とアメリカでは全く違う。日本では、高い水準で成果を上げている企業や組織を調べ、自社も“その程度”になるために真似しようという発想が強い。しかし、アメリカは違う。成果を出している組織や部門について、多くの場合、その組織の協力を得ながら、徹底的に深く掘り下げた調査を行う。このような調査の目的は何か。それは、成功している他社以上の成果を自社が出す方法を探るためである。そのため成功事例を徹底的に調査し、“成功をもたらした要因、環境”を分析し、それをたたき台にして、自社に適した方法を構築していくのである。