巻頭インタビュー 私の人材教育論 「目線を上げて仕事をする」 そうすればもう一歩 高いレベルの仕事ができる
1世紀以上にわたる非鉄金属資源の開発と生産を通して、亜鉛、銅、貴金属などの基礎素材を供給してきた三井金属。
時代によって、企業を取り巻く環境は変化すると語る宮村会長に、新時代に求められる人材とは何かをお伺いした。
少子高齢化とグローバル化で求められる人材が急変
── 宮村会長は10年以上前から、人材教育の面でもさまざまな新施策を講じてこられましたが、今ここで改めて人材強化についてのお考えをお聞かせください。
宮村 眞平
(※以下、宮村とする。敬称略)
今の企業にとっては、設備投資も大切ですが、人材強化がますます重要性を増してきました。これまで日本企業を取り巻いてきた環境と、これから取り巻くであろう環境が大きく違ってきたからですが、その相違点をどう認識するかがこれからの人材強化のポイントになります。
── 明治以来、日本は“人を資源”として成長してきました。喫緊(きっきん)では、バブル崩壊後、「失われた10 年」から回復し、いよいよこれから新しい成長戦略を練るという段階です。新時代の人材強化、人づくりはどうあるべきでしょうか?
宮村
環境の変化として、大きく上げられるのは、1つ目は来るべき少子高齢化社会、2つ目はグローバル化です。
まず、少子高齢化においてどういう視点が必要かを考えた場合、労働力が絶対的に不足するのは間違いない。そこで企業に求められるのは、高生産性を視野に入れた企業活動を展開する必要がありますが、そこではクリエイティブな人材がどうしても必要になってきます。したがって、人材教育においては、“創造性、独創性、開発性”という視点から人材を育てていかなければなりません。
2つ目のグローバル化では、“国境なき人、カネ、モノの交流”が過去のいずれの時代にも経験したことのない勢いで進んでいるので、単に言葉の障壁を乗り越えるだけでなく、異文化を理解し、異文化の人たちを受け入れて共存できる人材教育、地球的規模で活躍できる人材育成をしていくという視点が必要です。
その2つの視点が、今までと大きく違う。企業側も、それを認識したうえで人材教育を行わないと、進むべき方向性を見誤ることになるし、これからの時代は到底生き残っていけないでしょう。
自燃・可燃・難燃・不燃の4つのタイプがある
── これまでの日本企業を支えてきた人材は、伝統的に勤勉で、協調性があり、言われた仕事をきちっとこなすという気質を備えていましたが、今後、求められる人材は大きく変わるということでしょうか?
宮村
そもそも組織には「自燃型」「可燃型」「難燃型」「不燃型」の4つのタイプの人材がいると言われています。「自燃型」は、自発的に燃えるタイプ。「可燃型」は、指示されればやるタイプ。「難燃型」は、簡単に燃えないものの、いったん火がつくと徹夜や休日出勤もいとわないタイプ。「不燃型」は、火をつけても燃えないタイプです。中でも、この「不燃型」は、同僚や部下、上司の言うことさえ聞かず、組織の足を引っ張るタイプと言われ、組織の活力をそぐ要因と考えられます。
こうした組織の見方は昔からよく言われてきたことで、マネジメントをやる人は、まず、どのタイプがどれくらいの割合を占めているかを見極め、いかにして「難燃型」に火をつけて燃えさせて、組織の活性化を図るかが重要な役割の1つとなります。「難燃型」は、個性が強く、創造性や独創性が強い一方で、アクが強く、組織からはみ出しがちですが、クリエイティブ、創造性という方向でうまく着火して、個のパワーを引き出し、組織の活力を高めていく。それができるかどうかが、マネジメントの最大のポイントと言えるでしょう。