連載 調査データファイル 第68 回 男性の育児休業の取得問題と 昇進への心理的影響
少子化が急速に進行している日本社会にあって、将来のあり方に対する不安が、にわかに高まっている。その原因の1つに、男女による家事・育児の役割分担が固定化され続けていることが、大きく影響している点が挙げられるだろう。
調査データを見てみると、男性の育児休業取得率の低さに表れている。なぜ、男性が育児休暇を取得できないのか? その理由は“昇進”という心理的な問題が関係していた。
1. 男性の育児休業取得
男性の育児休業の取得率は、ここ数年の推移を見ても、全くの低空飛行である。育児休業制度を実施している企業のうち、平成8年度が0.12%であるのに対して、その後やや上昇傾向にはあるものの、平成17年度で0.50%という水準にとどまっている。
つまり、子供を持つ父親1,000人のうち、育児休業を取得した者は、わずか5人という状況である。なお、女性の育児休業取得率は上昇傾向にあり、平成8年度の49.1%に対して、平成17年度は72.3%にまで上昇している(図1)。
男性の中には、「育児は女の仕事」と考えている古色蒼然としたタイプもいるであろうが、そうした男性が99%以上を占めているという状況は、常識では考えられない。“子供が大好き”、“育児をしてみたい”と本気で思う男性も、少なからずいるはずである。それなのにこの数値……。育児休業を取りにくい理由があるはずである。
まず思い付くのは、「仕事が忙しくて休めない」といった理由であろう。そこで男性の労働時間を調べてみると、総務省「労働力調査」(平成17年)によれば、月末1 週間の就業時間が週49時間以上の就業者の割合は、全体で27.4 %となっているが、年齢階層別に見ると、平均的な子育て世代の“25~34 歳”と“35 ~ 44 歳”の割合は、それぞれ32.0 %、32.5 %と、30%を上回っている。
こうした長時間労働の蔓延は、日本全体でも確認することができる。総務省「労働力調査」によれば、常用雇用者の年間労働時間は、2005年で2,298時間である。この数字にはサービス残業が含まれていないわけであるから、実態はさらに長時間労働となる。この点に関しては、前回の3月号でも紹介しているが、労使が協力して労働時間の短縮に真剣に取り組む必要がある。