企業事例 ダイエー お客様の視点を定量化してCSに反映させる 他社との間で競争優位に立てる要因は、 “人”で差をつけること
お客様の視点を定量化して、店舗オペレーション力を強化する。ダイエーが実践する“お客様のレンズ”で売り場を見る活動は、CS を目に見えるものにした。
“CS の前にES ありき”とは言え、リストラをせざるを得ない状況の中でCS を現場にいかに根付かせ、業績に反映させるかで奮闘している。
ダイエーのCS 活動の現状は、同じ悩みを持つ企業の大きな指針になるだろう。
人事部の新入社員研修がきっかけとなりCSに発展
2002年3月にスタートしたダイエーのCS 活動は、4人のインフォーマルなミーティングから始まった。
そのメンバーの1人である三浦弘氏は、ダイエー入社後、人事の福利厚生から労政を経て、教育セクションに移って2年が経った2000年、新入社員向けの研修教材をつくり直す機会にめぐり合った。
当時ダイエーでは、年間1 万人にもなる新入社員(うち8割がパートタイム)の研修を、11本のビデオテープを見せる2日間のカリキュラムでこなしていた。1本30 分程度のビデオ11 本には、あいさつのしかたや接客マニュアルなどが収められ、それを見ながら学ばせる。ビデオが終わるごとに教育担当が部屋に入ってはいくが、ビデオが再生されているときには寝ている人も少なくなかった。
「これでいいのか?」
あいさつの形も大切だ。しかし、もっと大切なことがあるのではないか。三浦氏は、教育のセクションに就いてから強く感じていることがあった。それは“人は成長する”ということだった。だから、働くことによって成長するような機会を提供したい。それには、現状の研修は適切でないと感じていたのである。
三浦氏の進言により、2日間のカリキュラムが改定されることになった。期を同じくして、社内では創業経営者が退任し、新社長が就いた。新社長は新しいカリキュラムを新入社員だけでなく、全社員向けにつくってはどうかと提案。これがきっかけとなり、社長秘書、副社長秘書、営業部長と三浦氏の4人が、インフォーマルな場でよく話し合いを持つようになった。三浦氏は当時をこう振り返る。
「このときの一致した意見は『CS を正しく理解してもらうことが大切』ということでした。この取り組みが短期的でなく永遠に続くものと考え、しかも5万人を超す従業員に対して伝えていくには、会社として全社規模で取り組んでいく姿勢が重要だと話していたんです」
この4人の話し合いに社長・副社長が目を止め、2001 年8 月に「プレゼンテーションしてくれないか」ということになり、CS やその前提となるES を企業としてやっていこうということになった。そして2002年3月、CS推進室が誕生したのだった。