企業事例 KDDI 会社本位からお客様本位への価値転換 お客様満足の実現を追求する 全社を挙げたTCS 活動
「何としてもお客様にご満足いただける会社に変革したい」という小野寺社長の強い意志の下、全社統合のCS として始まったTCS(Total Customer Satisfaction)活動。仕組みありきではなく、社員1 人ひとりが自律してCS 活動を行うことを念頭にマネジメントクラスからの意識改革を実施。現在では各部署で自発的にTCS 向上のための活動をするにまで至った経緯と現状をレポートする。
経営理念実践を担うKDDI のTCS 活動
KDDI は、2000年10月の設立当初から、「お客様の満足と信頼の確保」「従業員の幸せ、活力ある企業」「株主様、お取引先様などの信頼」「社会の発展」という4つの基本理念を掲げ、企業活動を進めてきた。この基本理念を具体的な行動に落とし込んだのが、2003年にスタートしたTCS(Total Customer Satisfaction)活動である。
TCS活動の推進役として、強いリーダーシップを発揮しているのは、小野寺正社長だ。事業の環境や質がこれまでに経験したことがないスピードで変化し続けている通信業界だが、小野寺社長が就任した2001年6月当時、KDDI の業績は厳しいものだった。携帯電話市場においても、2002 年3 月、わずか1 ヶ月間とはいえ、ドコモに次ぐ地位を3 位に落としてしまった。こうした状況の中、小野寺社長は全社を挙げたCS向上に取り組んだのである。
2002 年4 月、小野寺社長はカスタマーサービス本部を新設。部門毎に分散していたお客様対応の機能を集約するためだった。
一方で小野寺社長は、KDDI が抱えるCS の問題を1つひとつ解決していくために、役員、本部長をメンバーとした委員会を設置した。第1 回目の会合は9月13 日。TCS委員会事務局グループリーダーの和田垣誠氏は、これに同席するように命じられた。正式な異動の発令は16日。その意味で、和田垣氏にとっても、この日の会議は印象深い出来事として、今も鮮明に記憶しているという。
「何としても、お客様にご満足していただける会社に変革していきたいという小野寺社長の強い意志を感じました。同時に、小野寺社長の強い意志を実現する推進役となるために、私たちは具体的にどのように活動していけばいいのだろうと不安も感じました」
経営品質を高めることこそCSにつながる
この年の秋、KDDIはCSに関する社内ヒアリングを実施している。ここから、「CS はお客様接点(特定部門)の責任だから他人事、という根強い社員意識」「各部門の戦略、サービス、業務プロセスにおけるお客様視点の掘り下げが不十分」「各部門において、お客様の声に対応する優先度が低く、サービスや品質にお客様の意見が反映されていない」「お客様不満足が発生しても、マンパワーやコスト等を理由に、棚上げ、たらい回しされ、部門間の連携も希薄」といった同社の問題点が明らかになった。
これらを踏まえた上で、同年11 月、小野寺社長は「CS活動によって企業価値を高める」「クレームの根を絶つ」「KDDI として統一した1つのCS 活動に高める」という3つの基本方針を打ち出した。そして、2003 年1 月の年頭挨拶で、小野寺社長は全社員にTCS活動のスタートを宣言したのである。
9 月の委員会初会合から12 月までの約3 ヶ月間、和田垣氏は小野寺社長の目指すCS 向上活動の考え方を全社員に浸透させるには、どうしたらいいのか、考え、悩み続けた。そして、模索を続ける中で、その道筋として見出したのが、経営品質向上プログラムだった。
「あらゆる活動のプロセスは、お客様満足度に現れるという経営品質の思想を当社なりに活用することで、我々が目指すCS 向上活動は実現できると。むしろ企業クオリティの向上を目指すことは、自ずと全社を挙げたCS 向上活動につながると判断したのです」