企業事例 NECフィールディング 全社横断型・全社員展開のCS 状況を徹底追求する会議と 総合的な視野で実施する教育が、 CS の根幹をつくる
1957 年に日本電気(NEC)の全額出資により設立されたNEC フィールディング。
同社はお客様第一主義を社員のDNA として根付かせ、長年にわたってCS 経営を実践してきたことで知られる。
緻密な制度設計と、制度に「血を通わせる」組織風土。この両輪を回す原動力となった「教育」のあり方を探った。
CSを機軸とした経営になぜ取り組んできたのか?
NEC フィールディングのCS への取り組みには、長い歴史がある。1993年には本格的なC S 向上活動として「CSIP活動(CS Improvement Program)」を開始、障害半減やサイクルタイム50 %短縮など、CS の基盤強化に取り組んだ。
1998 年からは「CSIP-Ⅱ活動」として、3 年間で障害率を半減、業界トップの製品品質、技術力ワンランクアップ、CS マインドの向上、CSI によるCSマネジメントなどに着手、業界トップを目指した活動を開始した。
2001 年からは「CSIP-Ⅲ活動」として、トラブル対応力強化や顧客ニーズ対応力強化など、トップを確立するための活動を展開。2003 年からは「ECSP活動」として、お客さま価値創造の徹底追求、お客さま知覚品質のさらなる改善など、「他社の追随を許さない活動」を展開している。
これらの活動を全社で戦略的に進めるスキームとして活用したのが、1997年に導入した「経営品質改善プログラム」である。
2001年には「経営品質改革推進委員会」を設置、経営品質改善プログラムに沿って、CS向上の指標化、現場へのエンパワーメント、各種改善活動など組織的な変革に取り組み続け、2003年には高いレベルでCS 経営を実践する企業に贈られる経営品質賞を受賞した。もちろん受賞後もその取り組みは続いており、現在ではさらに深化した活動に着手しようとしている。
NEC フィールディングのCS 活動について、その推進者である西山義久氏は「事業としての要請」だと述べている(以下発言部はすべて西山義久氏)。
「弊社の事業は法人のお客様を中心とした、ITシステムの保守・各種サポート業務です。現在はIT 技術が進歩し、コンピュータが小型化、高度化しています。かつては技術者の腕前とは、壊れたものをいかに早く・確実に修理するかにありました。しかし、現在では直すのは当然で、むしろ“お客様に的確な説明をし、安心を提供する”あるいは“お客様の潜在的な不便さやニーズを状況から分析し、どうしたら使い勝手のよいシステムになるかを提案する”といった方向にシフトしています。当然ながら、コミュニケーション能力が非常に重要になり、お客様にとって最もよいことを考えられる人間でなければ、評価と支持を得ることは難しくなりました」
NEC製品を購入した企業と保守・管理契約を結び、定期的なメンテナンスはもちろん、24時間体制でカスタマーサポートを提供するという関係を長年にわたって築いた関係性の中で、次世代システムの導入や、さらなる保守・管理などを受注していくNECフィールディングは、「IT サービス業であり、CSを向上しなければ事業が成り立たない」という。
「CSの向上はすなわち、お客様の利益も増大。それを通じて、われわれも成長するのです。CSと業績は相反事項ではなく、同時達成すべきもの。これを弊社では“CSと業績のダイレクトリンク”と表現しています」
CS 向上会議と全社横断型のE-CSP 活動
NEC フィールディングのCS 向上活動の基点となるのは、毎月開かれる“CS向上会議”である。これはCS担当取締役を議長とする会議で、全幹部が出席し、社内のCS 活動に関する進捗報告を毎月1 回行っている。10 年以上続くこの会議の特徴は、単なる報告会ではない。課題に対して、各々の部署が活動をどのように展開し、何が改善され、何が実行されていないのか。実行されていないことについてはいつまでに行うのかなど、具体的な行動レベルまで“追いかける”ディスカッションが展開される。
CS向上会議で“追いかける”具体的活動が、先述したCSIP 活動やE-CSP活動である。CSを向上するための具体的なアクティビティを設計し、必要な制度や実行プランなどを策定、実行しているが、それぞれの実行プランには、執行役員がテーマ別プロジェクトリーダーとして任命されている。リーダー役員は全社からメンバーを選出し、全国一斉に活動を展開する仕組みだ。
この活動の要は、リーダーとなった役員が、そのテーマに関しては全権を持っていることである。
「進め方に関してはおおむね、リーダー役員の号令に従わなくてはいけない。全社から万遍なくメンバーを選出するのが伝統となっています。役員に全権を持たせることで、すばやい実行が可能になります」
仕組みをすたれさせない部門展開と徹底追究会議
同社の制度や仕組みが回り続ける大きな“鍵”となっているのが、品質目標展開活動から学んだ、部門展開が徹底的に行われているところである。それはCS 向上活動に限ったことではなく、事業戦略への取り組みも同様である。CS向上会議はもちろん、たとえばNECフィールディングは、自社の事業を“IT ヘルスケア”事業と位置づけ、自身は“お客様のITにおけるホームドクター”であると規定している。“ITサービス業”への転換を早くから志向し、サービス向上に取り組んできた。毎年度、このコンセプトに沿った事業戦略が策定されるが、各部門はその戦略実行のための部門戦略・実行計画等を策定する。全社→部門→部・課へと目標・実行計画をブレイクダウンし、部門によっては個人にまで落とし込まれるわけだ。