企業事例 博報堂 企業内大学で社内キャリアアドバイザーを養成 社員のキャリア開発を支援する キャリアアドバイザーを 社内EAP にも活用
育成型人事制度を構築し、優れたプロフェッショナルを生み続けるために設立された企業内大学。博報堂はキャリア自律を支援するなかこの大学で育成されたキャリアアドバイザーを、社内EAP としても活用するというユニークな試みに着手した。組織現場に点在する社内キャリアアドバイザーが心のケアも行うという活動についてレポートする。
名刺を持った社員アドバイザーたち
上下関係や部署の枠を飛び超えて、社員たち自ら、職場のメンタルヘルスにも一役買う――。
博報堂の先進的な試みが注目を集めている。担い手となっているのは、「社内キャリアアドバイザー」と呼ばれる管理職たちだ。
自社の企業内大学、博報堂大学(HAKUHODO UNIV.)で養成を受け、人材育成やキャリア開発の専門知識、スキルを身につける。初年度の2005年度は25 名、2006 年度は30 名が受講した。
ちなみにこのプログラムを開発し、実施の支援をしたのは、慶應義塾大学大学院教授の高橋俊介氏と、同大学キャリアリソースラボラトリー(代表:総合政策学部教授花田光世氏)である。
養成コースの期間は、6カ月で全12回。この中にメンタルヘルスについてのカリキュラムも組み入れている。抑うつやバーンアウト(燃え尽き症候群)など、自分の周りで実際に起こったケースを持ち寄り、対応について話し合う。
カリキュラムを修了した後は、社内キャリアアドバイザーの名刺を持ち、現場における人材育成やキャリア開発を推進する。そうした活動の中で、自分の部署はもちろん、周りの部署でも何かトラブルがあれば臨機応変に対応。上司や人事、産業医などと連携しながら、問題解決を図る。彼らの活動の主眼は、あくまでも現場に密着したキャリア開発だが、心の問題の早期発見や対応といった、プラスアルファの効果もみられるようになった。
キャリアを支援する博報堂大学
このユニークな試みに着手したいきさつについて、人事局人事部マネジメントプラニングディレクター上原直人氏に伺った。
「起点となったのは2004年3月に当社社長、成田純治が打ち出したビジョン『クリエイティブな博報堂をめざそう』という社員への呼びかけです。その前年に、当社は大きな転換点を迎えていました。大広、読売広告社と経営統合を行い、持ち株会社である博報堂DYホールディングスを設立。また、日本初の総合メディア事業会社、博報堂DYメディアパートナーズを立ち上げたのです。そこで、組織の生まれ変わりにともない、博報堂が目指すべきポジションを再確認しました。当社の原点である『クリエイティビティ』をもう1度見つめ直し、“育成型”人事制度の構築に着手したのです」
新人事制度のコンセプトとは、「優れたプロフェッショナルを生み出し続けるシステム」。このシステムは、2つのステップによって組み立てられている(図1)。