企業事例 伊藤忠商事 「社員をキラキラ輝かせる」がモットー 個人面接、研修への関与、職場への 介入とアクティブに活動を展開
伊藤忠商事に、キャリアカウンセリング専門の部屋が設けられたのは2001 年。景気が低迷していた設立当初には、転職支援が主であった。
だが現在は、多種多様の内容が持ち込まれている。個別相談のほか、社員研修にも積極的に関与。
相談に来る人を待つだけでなく、個人にも組織にも働きかけ、ライフキャリアを展望した戦略的な動きをすることで、メンタルヘルスの向上に結びつけている。
会社の中のオアシスとして
「働く人にキラキラ輝いてもらう」
これが設立当初から掲げているキャリアカウンセリング室のモットーだ。
「会社の中のオアシスでありたいと思っています」と室長・浅川正健氏。
「ただ、こう表現すると、困っている人や病気の人が行く場所だと思われてしまいますが、そうではありません。“私はキャリアの話をしに来ました”と胸を張って来てほしい。この部屋に足を踏み入れた瞬間にほっとして、仕事のことや上司との関係は忘れてもらい、そのうえで、さあ、あなたは何に困っているのですか、一緒にキャリアのことを考えてみましょうよと。トラブルが起きないように先に手を打つというよりは、普通に仕事ができるように支援させてもらう。部屋を出て帰るときの明るい顔を見ると、うれしくなります」
キャリアカウンセリング室の機能は、働きかける対象や内容によって、6分野に整理できる。
1)個室において1対1で行う、個人のキャリアカウンセリング。
2)本人と上司からの要望があれば転職支援。
3)メンタルヘルスの専門家との連携。キャリアカウンセラーは倫理規定上、治療行為ができないので、「アンテナ」を張って、さまざまな従業員に声をかけてその場で話したり、相談を受けたりするうちに「このままでは危険だ」と思われる人に気づいたら、専門家を紹介する。
4)組織長、いわゆる「上司」への支援。相談に来た場合の対応だけでなく、本人の希望があれば関係者の間に立って、解決に手をつくすことがある。また、新任管理職研修のときに、具体的な事実に裏打ちされたキャリアに関する話をする。
5)新任管理職研修ばかりでなく、新人研修やキャリア採用者の入社時研修など、さまざまな研修に参画し、具体的な事例を通じてキャリアに関する話をする。自律的キャリア形成についても、興味と関心をもってもらうように働きかけ、相談室の利用を促す。
6)グループ会社に対するサポート。グループ会社の社長や人事部長が集まる場でキャリアに関する話をする。
キャリアカウンセリング室は、2001年に浅川氏および派遣スタッフの女性と2人でトライアルスタートし、2002年から本格的に稼動した。現時点でのスタッフは、浅川氏を含めて5人。うち3人がCDA の資格を持つキャリアカウンセラーである。