連載 調査データファイル 第69 回 雇用・人事システムの構造改革 中小企業の人材育成
大企業の経営戦略や人事戦略はビジネス雑誌などでたびたび紹介されるが、中小企業の情報はあまり目にすることがない。
そこで、今回は中小企業がいかなる経営・人事戦略の下で経営活動を行っているのかを、調査データに加え企業事例も含めて紹介していく。
1. 経営戦略の有無
そもそも中小企業は、どの程度経営戦略を明確化しているのであろうか。
雇用情報センターの調査結果によれば、社員にも公開している明確な経営戦略や経営方針が「ある」と回答した企業は52.2 %、「ない」が37.3 %、「不明」が10.5 %となっている。つまり、約半数の企業が、経営戦略を明確にして経営を行っている。
さらに、経営戦略の有無と、過去3年間の最終利益の推移との関連をみると、経営戦略がある企業の方が、経営戦略がない企業よりも増益となった企業の割合が10.3 ポイント高くなっている。一方、利益が低下した企業の割合は、経営戦略がない企業よりも10.5 ポイント低くなっている(図表1)。
このように、経営戦略の有無と業績の関連を見ると、経営戦略が明確になっている企業の方が、業績好調の企業割合が高いという傾向が認められる。
技術革新やグローバル化の進展によって、市場競争が激化している中では、明確な経営戦略に基づいて企業経営を行っているか否かが、企業経営に大きく影響しているようである。
2. 経営戦略と人事戦略
経営戦略は、人事戦略と連動しているものと思われるが、経営戦略の有無と採用・育成方針との関連をみると、経営戦略がある企業の方がない企業よりも、「中途採用は必要に応じて最小限に行い、正社員の新卒採用・内部育成を重視していく」割合が、13.1 ポイント高くなっている。