インストラクショナルデザイナーがゆく 第1 回 ディズニー・リゾートで 「魅力的な評価」を考える
“評価の天才”とHRD 関係者がフロリダに大集合
「ハーイ! ゲストのみなさん、ディズニー・リゾートにようこそ! 楽しんでいるかーい?」
大きなモニターにミッキーが登場し、早口で呼びかける。キューティ・ブロンドの女の子も、軽く100 キロはありそうなおじさんも、口をそろえて「イェーイ!」見渡せば、カラフルなリゾートファッションに身を包んだ、家族連れやカップルでいっぱいだ。ビジネススーツにPCバッグ、時差ボケでノリの悪い私は、ひとりモゴモゴ……。
ここはフロリダ、オーランド。空港からディズニー・リゾートに向かうシャトルバスMagical Expressの車中である。東京から、豪雪のシカゴ経由で15時間。機中ではラップトップを開けて仕事を片付けるはずだったが、ワイン片手に『オール・ザ・キングスメン』『涙そうそう』『フラガール』を観て泣いたり笑ったりしているうちに到着してしまった。さて、これから1週間、ディズニー・コロナド・スプリングス・リゾートで開催されるTraining 2007の資格認定プログラムとカンファレンスに参加するのである。
ヨロヨロとたどり着いたホテルは、長閑なコロニアル風のカリビアン・ビーチ・リゾート。早朝、窓を開けるとヨットの浮かぶ湖と、白砂のビーチがまぶしい。スーツケースから水着を取り出し未練がましく眺めるが、エイヤッと邪念を振り切ってタクシーを呼び、会場に駆けつける。
コーヒー片手にコンベンションセンターの1室に集まってきた約30人の参加者。そのほとんどは米国企業のトレーニング部門、HRD 部門のスタッフやマネジャーだ。甘くて大きいペストリーをほおばりながら自己紹介をしていると、ドン・カークパトリック博士が息子のジム・カークパトリック博士と登場。80歳を過ぎていよいよ元気一杯である。
開口一番、「人呼んで“Evaluation Genius”(評価の天才)のドンです」とニヤリ。ご自慢のバリトンで、“MyDarling Clementine”を歌ったり、評価の4レベル、Reaction、Learning、Behavior、Results をみんなと唱和したりと、毎度お馴染みのウォーミングアップで始まる。ドンとジムのワークショップ参加は私にとって恒例行事。それは、インストラクショナルデザインの世界でも、精巧な「評価」技術への期待が年々増し、「評価の聖書」ともいえる「カークパトリックの4段階評価」を、時代のニーズにあわせてどのように応用すべきか知りたいから、である。さらに、そこに集まる世界のトレーナーやHRD関係者の本音が聞ける、というのも大きな魅力なのだ。