人材教育最前線 プログラム編 後編 東京電力 自立・自律した人材として競争時代を勝ち抜く 30 歳を到達点とした「実践力開発プログラム」―職場実践―
技術者に向けて、管理職に必要な能力を身につけるために導入された「実践力開発プログラム」。
対象となる到達点を、45 歳平均から30 歳と15 歳前倒しにしたプログラムだ。
18 ~30 歳までの技術者を徹底的に鍛えるこのカリキュラムは、3 つのステップを踏んで長期間で育成するという画期的なものになっている。
3 回連載の最終回では、研修後の職場フォローの現場をレポートする。
実践力開発プログラム開始が支社の人材育成強化と重なる
東京電力が、昨年からスタートさせた実践力開発プログラムは、テクニカルスキルにヒューマンスキル、コンセプチャルスキルを加えて、若手技術者の能力を早く、高く引き上げようという試みだ。このプログラムで重要なのは、研修で学んだ内容を職場で実践する事である。したがって、研修自体も実践を前提に組まれている。
そこで、職場実践はどうなっているのか、北関東の東京電力下館支社のケースを紹介したい。
のどかな田園地帯を走るJR水戸線の1つに、下館駅がある。この駅舎からほど近い所にある東京電力下館支社には、330 人ほどの社員のうち、技術部門に200 人が勤務している。その技術者は配電保守や送電、あるいは通信などを手がけているのである。
下館支社には「人が育てば、会社も育つ。みんなで取り組む人材育成!」の標語がかかる(写真)。昨年から支社長の肝いりで始まった「人材育成プロジェクト」の標語だ。
2006 年からの取り組みで、3年計画で“社員1人ひとりが何に取り組むかを宣言し、全員がワンランク上の技術やサービスを目指し、自分自身もワンランクアップしよう”という試みである。
偶然、この支社の取り組みに、全社的な実践開発プログラムが重なった。これにより、人材育成という方向性が、より強いものになっていったのである。
そうした環境の下、42人という下館支社の中でも大所帯である配電保守グループから、実践力開発プログラムの初回研修に当時入社2年目の鈴木雅弘氏(20)と、入社10 年目の綿引航氏(27)の2名が参加することになった。鈴木氏はステップⅠ、綿引氏はステップⅡの研修に臨んだ。
2人を送り出したグループマネジャーの土田茂広氏は、はじめてこのプログラムの内容を知ったとき、驚いたと言う。
「対人関係能力や問題解決能力も含め、短期間で力を伸ばそうというのはすごい発想だと思いました。大変なことになるなと正直ちょっとひるんだのですが、その後に上級指導者研修を受け、これならやれるんじゃないかという思いに変わりました」
本プログラムが始まるのに先立って、技術研修部の方波見力氏らコースマスター(実践力開発プログラムの伝道師)が、各支社・支店で行った上級指導者研修は、受講生を送り出す側のマネジャーたちの不安を取り除くのに、かなり役立ったようだ。
研修で学んだ事をマネジャー会議で話させる
土田氏は鈴木氏が研修に行く前に、実践開発プログラムのツールである「期待シート」を使って、マネジャーとして何を身につけて帰ってきてほしいかを明示した。いちばん学習してもらいたかったのは、問題点の見つけ方や解決方法だ。