企業事例 ジョンソン・エンド・ジョンソン クレドーの価値観を社員に浸透させる クレドー・サーベイの 改善サイクルは、働きがいを 向上させるためのサイクル
ジョンソン・エンド・ジョンソンの信念体系で、ビジネス上の原則。
そして文化そのものというクレドー“( 我が信条”)。このクレドーの大切さを痛切に感じていた松本社長が、クレドーの価値観を社内に根付かせるために、クレドー・オフィスを創設。
クレドーに記されている項目を、いかに行動に落とし込み、実務に結びつけるのか。
社員の働きがいをも向上させる、そのミッションを紹介していく。
企業文化はそこで働く人々が醸成するもの
ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)にとって、「Our Credo(我が信条)」(以下クレドー)は、すべての企業活動の拠り所である(図表1我が信条)。
クレドーとは「J&Jの信念体系であり、ビジネス上の原則であり、哲学。そして文化そのものである」と説明するのは、クレドー・オフィス・ディレクターの堀尾嘉裕氏である。
堀尾氏は、2005年、松本晃J&J(株)代表取締役社長のトップダウンで創設されたメディカルカンパニークレドー・オフィスの、初代チーフ・クレドー・オフィサー。自身の就任に驚いたと話す一方で、その理由を「新卒入社で、J&J以外の企業文化を知らないからではないか」と分析した。
一方、人事総務本部人材開発部マネジャーの馬場美由希氏は、「中途採用の場合は、J&Jの企業文化が今までの会社と違うということが肌感覚で理解できます。企業文化はそこで働く人々が醸成するもの。その意味でJ&Jで長く働いてきた堀尾さんがクレドー伝道者として抜擢されたのは当然だと思います(笑)」と、付け加えた。
クレドーとはJ&Jの行動規範
実際、日本のJ&J は1961年に事業を開始した後、事業拡大やM&Aなどで組織や人員が増え続けている。クレドーを経営の中心と位置づける同社にとっては、新しくJ&Jの一員となる社員に、クレドーの価値観を浸透させることは、極めて重要なこと。クレドー・オフィスが創設される以前にも、そのための施策は熱心に実施されていた。
そうであっても、1995年に本社にしかないクレドー・オフィスが、日本にだけ誕生したのはなぜかという問いに、堀尾氏は次のように答えた。
「前年のクレドー・サーベイの結果、クレドーの実践の数値が落ちてきていたのかもしれませんね。しかし、それ以上に私は、社長がクレドーの価値観を、しっかりと社内に根付かせなければならないという強い熱意を持ったからではないかと推察しています」
そして、その強い熱意の背景として、堀尾氏は偽装疑惑、粉飾決算、インサイダー取引など、不祥事が引きも切らず繰り返されている日本企業の現状を指摘した。
企業の社会的責任が厳しく問われる中、クレドーの価値観の浸透は、J&Jが成長し続ける上でますます重要というわけだ。だからこそ、クレドー・オフィスに寄せられた期待は大きい。もっとも人員は、堀尾氏を含めわずか3名。とはいえ、人事総務本部、特に人材開発部と共同で、さまざまな施策を実行している。