My Opinion ― ③ 働きやすい会社から 働きがいのある会社へ
企業の新人採用枠が拡大していく中、入社3年以内で辞めていく若者が後を絶たない。
企業の将来を支える、若い社員のこのような現状を見ているとあらためて「働きがい」を考え、「社員満足度」や「モチベーション」との関係を考えていかなくてはならないのだろう。企業活力研究所が東レ経営研究所の協力を得て行った「若手社員の働きがいに関する調査」を基に考えていく。
従業員満足度向上だけでは「働きがい」は醸成できない
いうまでもなく企業の成長は社員が支えている。社員がやる気を持って仕事に取り組み、その成果を組織への貢献につなげることで、企業全体として発展することができる。したがって、どんな企業であっても、社員のやる気を喚起しようと、さまざまな工夫を凝らしている。モチベーション論や社員満足度などの議論が盛んに交わされるのは、このような問題意識を背景としている。
「モチベーション」や「満足度」などと並んで、近年では「働きがい」というキーワードが語られるようになった。多くの場合、これらの言葉は同じようなものとして扱われているようだが、私は「働きがい」と、いわゆる「モチベーション」「従業員満足度」とは、異なるものであると考えている。モチベーションや満足度を上げても、必ずしも働きがいが高まるわけではない。この思いを持つのは、長年企業の人事・人材開発の現場に身を置いてきた中で、しばしばそのような実例を目にしてきたからである。
これまで日本の企業の多くは、主に処遇、賃金、労働環境などの「満足度」を分析し、その状況を改善することで、企業人の活力をアップしようと努力してきた。しかし、これらの外的動機付けによる満足度の向上だけでは、従業員の活力をアップするには限界がある。
近年、企業業績が好転している中、今改めて「働きがい」について考える必要があると感じている。それは日本企業が活力を取り戻したかに見える一方で、現場で働く20代から30代の若い社員の多くが、やる気を失い、疲労感に落ち込み、企業や組織に対する信頼感を失っているとのデータがあるからだ。2007年は、近年来最高ともいえる新人採用枠の拡大に、就職戦線は大いに沸いた。ところがその一方で、新卒入社3年以内で会社を辞めていく若者は後を絶たない。企業の将来を支える若い社員のこの状況は、決して見過ごせる問題でない。
働きがいとは何か。働きがいと社員満足度、モチベーションなどとは、どのような関係にあるのか。まず最初に、企業活力研究所が東レ経営研究所の協力を得て実施した、若手企業人の働きがいの現状に関する調査結果を紹介したい。
働きがいを感じている若手はわずか3割以下という現実
この調査は2006年12月に、20代から30代の民間企業で働く正社員1000人を対象に行った(インターネットアンケート調査)。回答者は、業種別では製造業(メーカー)500 名、非製造業(メーカー以外)500名。規模別では、社員数1000人以上の企業500名、100人以上1000人未満が500名である。また、回答者の構成は、男性726名(72.6%)、20代が約4割(20代前半は58名)、30代が6割を占めた。
アンケートでは、まず最初に「あなたは今、働きがいを感じていますか?」と単刀直入に聞いた。結果は以下の通りだ。
強く感じている 3.5%
かなり感じている 23.6%
どちらとも言えない 34.2%
あまり感じていない 28.1%
全く感じていない 10.6%
企業の人事・人材開発担当者にとっては関心のある数字であるが、「働きがいを感じている」と答えたのは全体の27.1%であり(強く感じている+かなり感じている)、何と3割以下という数字だ。逆に「あまり感じていない」「全く感じていない」を合わせた38.7%、つまり、全体の4割近くが「働きがいを感じていない」と回答している。予測通りではあったが、働きがいを感じている層を、働きがいを感じていない層が大きく上回る結果となった。
さらに「今の会社で今後何年くらい働くつもりですか?」と聞いた。結果は以下の通りである。
定年まで 22.6%