My Opinion ― ② 社員のエンゲージメント測定と 人事施策で企業業績を高める
エンゲージメントとは、社員の会社に対する思い入れである。
エンゲージメントスコアが高いベスト企業は、それ以外の企業に比して、売上高成長、利益、生産性において優れているというデータが示された。
日本で調査され始めたばかりのエンゲージメントスコアを国際比較し日本における企業の社員意識と人材マネジメントのあり方を探る。
アジア・パシフィックのベストエンプロイヤー調査
ヒューイット・アソシエイツは、2007年4月、昨年秋に実施したアジア・パシフィックにおけるベスト・エンプロイヤー(最優秀雇用主)調査の結果を発表した。
この調査は、日本、中国、香港、韓国、シンガポール、インドのアジア6カ国とオーストラリア・ニュージーランドで実施された。同調査は2年に1度実施されてきたが、今回日本が初めて対象とされた。
調査の目的は、これら地域を代表する企業がどのような人材マネジメントを実施し、社員がどのような意識をもっているか、を探るというもの。とりわけそれら企業が、“いかにして社内の人材を通じて真の競争優位を築いているのか”“企業を働きがいのある場とする要素は何か”を探ることだった。そのため調査は、CEO(最高経営責任者)から人材マネジメントに関する見解・アプローチに関する情報を収集する「人事戦略調査」、人事の責任者から企業ビジョン、方針および人事諸制度に関する情報を収集する「人事制度調査」、社員の方々から、自社についてどのように考え、感じているかを測定する「社員意識調査(エンゲージメントサーベイ)」によって行われた。これら3つの調査の結果を基にインタビューなども行い、大学教授などの専門家から構成されたパネルの判断によって、参加企業を調査分析し、ベストとレスト(ベスト以外)に分類した。
この調査に参加したのは総数約750社。ちなみに日本からは約20社が参加している。エンゲージメントサーベイの参加者数は、約16万人である。
エンゲージメントスコアが高く、CEOが明確に人事戦略にコミットしており、なおかつしっかりとした人事制度を構築・運用している企業を、「ベスト」として分類した。
アジア・パシフィックでは、フラッシュメモリー製造を手掛けるSpansion(中国)、リッツカールトンホテル(香港)、フォーシーズンズホテル(シンガポール)、SK Telecom(韓国)、Satyam Computer Services(インド)、UBS証券会社(日本)など20社がベストとして選出された(図表1)。
エンゲージメントが高い企業は企業業績が高い
日本においては今回が初めてだったが、実は当社は8年前から北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域で企業を対象としたベスト・エンプロイヤー調査を行ってきた。
今回の結果からも、企業業績とエンゲージメントとの相関関係があることがわかっている。エンゲージメントスコアが高いベスト企業は、それ以外の企業に比して、売上高成長、利益、生産性において優れているというデータが示されたのである。