My Opinion ― ① “従業員の働きがい”を軸とした 経営への転換
成果主義が求められて久しいが、組織で働く人間が組織における働きがいを感じない限り、継続した高い成果を生むことは難しい。
「組織における働きがい」とは何か。Great Place to Work Instituteのサーベイを基に、日本における「働きがいのある会社」の現状を考察し「2007年、働きがい元年!」を提言する。
「仕事のやりがい」と「組織における働きがい」の違い
経営者や人事部の方々が「個人のモチベーションを高めたい」という発言をすることが多い。とても大切なことである。しかし、モチベーションには「仕事への遂行意欲」と「組織への貢献意欲」の2種類があるが、組織にとって重要なのは、「組織に貢献したいという熱い想い」であって、「一生懸命仕事をやります」というレベルではない。
図表1は、「仕事のやりがい」と「組織における働きがい」の違いを表したものである。優秀な人は、自らの仕事に意味や『使命感』を持つことができる。自ら目標を設定し、自分なりに『達成感』を得ることができる。こういう人は専門性の高い仕事に就いているケースが多いが、当然のように仕事が好きで『面白感』に満ちた時間を過ごすことができる。
ところが、そのように元気でやる気満々の人が、所属する会社の経営者あるいは管理者が信用できず、会社から人としての尊敬を受けられず、社内のさまざまなことが公正に運用されていない場合、もともと持っていた「仕事のやりがい」も失われ、組織に貢献したいという気持ちもなくしてしまう。
もっと悪いケースでは、「仕事のやりがい」を強く持っている個人が、信頼できない会社や経営者の下では、仕事へのロイヤリティが強いだけに、会社を辞めてしまうことがある。
これまで多くの日本企業は「仕事のやりがい」を高めることには努力をしてきたかもしれないが、会社は「個人の仕事への遂行意欲」に頼るのではなく、組織として「働きがい」がある状態を維持・向上させていく必要があるのではないだろうか。
「満足」度+「働きがい」度
“従業員の「満足」度を高めたい”という経営者も増えてきた。しかし、「不満」が少ないのと「満足」度が高いのでは意味が違うが、結局は「満足」度が高いのは、衛生要因が充実した会社である。能力が発揮しやすい環境はとても重要で、従業員の「満足」度を高めることは大きな経営目標になると思うが、それだけでは経営努力として不十分ではないかと思う。
誰でも自分の能力を発揮したいと思う。若手社員を採用する時も、「能力が活かせる会社かどうか」というのが大きなアピールになるが、組織としては、優れた従業員が能力を発揮し、かつ“組織に貢献してもらう”ことが、さらに重要になる。Great Place to Work® Instituteは、「満足」度に加えて、「働きがい」度を高めていくことが重要であるという提案をしている。
Great Place to Work® モデルとは何か
「働きがいのある会社」に関する研究は1980年までさかのぼる。新聞社に勤務するジャーナリストだったロバート・レベリングが、「ベストカンパニー・ツー・ワーク・フォー(最も働きがいのある会社)」という書籍を執筆する時に、従業員の視点という発想で会社を調べたのが研究の始まりであった。1冊の本のために3年半にわたる徹底したインタビューを実施した。その本がベストセラーになり、出版社から再度依頼を受け、また3年半のインタビューを敢行した。延べ7年におよぶ膨大なインタビューの相手は、数千人になった。さまざまな業種、さまざまな職種、さまざまな年齢層、男女、さまざまな人種など、多様な従業員にインタビューをした。そして、多くの人が属性に関係なく「仕事のやりがい」と「組織のおける働きがい」について、共通の認識を持っていることがわかったのである。
この膨大なインタビュー内容が整理され、アンケートが開発された。現在は57問の5段階評価設問(ステートメント)と、2問の自由記述回答設問がある。この57のステートメントは、特定の専門家が頭で作ったものではなく、元は「従業員の生の声」である。この57の生の声を合理的な説明がつくように、5つに整理されたものをディメンションと呼んでいる。簡単に説明すると以下のようになる。