連載 調査データファイル 第70 回 雇用・人事システムの構造改革 中小企業の人材育成Part2
前回、中小企業の経営・人事戦略の有無とその企業の業績が深く関連していることを確認した。
今回は、中小企業の人材育成のPart2 として中小企業が持っている競争力の源泉と人材戦略の関連性を調査データと新たな企業事例とともに紹介していく。
1. 人事戦略と企業競争力の源泉
経営戦略と人事戦略は連動しており、経営戦略のある企業のほうが、時間とコストのかかる正社員の新卒採用・内部育成を重視している割合が高いのに対して、経営戦略のない企業では、即戦力の人材の中途採用や非正社員の活用、業務の外注を重視する割合が高くなっている、ということを前回確認した。今回は、中小企業が持っている競争力の源泉と人材戦略の関連性を見ることにする。
まず、中小企業が持っている競争力の源泉が、どのようなものであるかを確認すると、以下のような内容となっている。
まず、全体では「サービスの提供力」(47.9%)が最も多く、次いで「価格競争力」(32.0 %)、「加工技術力」(30.3%)、「営業・販売・マーケティング力」(27.5%)、「ブランド力・知名度」(25.8%)、「商品価値」(22.5%)となっている。サービス提供力と価格競争力、加工技術力が、三大競争力源泉となっている。
業種別に見ると、当然のことながらかなりの差異があり、製造業では「加工技術力」、「価格競争力」、「製品開発力」が、金融・保険業と卸売・小売業では、「サービスの提供力」、「営業・販売・マーケティング力」が、サービス業では共通して「サービスの提供力」が、それぞれ高い回答率を示している(図表1)。
2. 人事戦略と企業競争力
こうした競争力の源泉と人事戦略との関連を見ると、「正社員の新卒採用・内部育成重視」と「正社員の新卒採用・内部育成と中途採用を同程度重視」の人材育成重視グループと、「即戦力の人材の中途採用重視」と「非正社員、業務外注重視」の人材育成軽視グループでは、回答分布が異なっている。
人材育成重視グループの回答率が高くなっているのは、「加工技術力」、「製品開発力」、「ブランド力・知名度」、「商品価値」などである。