Close Up 企業レポート 「プロ」を育成する独自のシステム 従業員のスキルアップを目指し 社内認定資格制度を設ける企業が増えてきた
ここで紹介するIDC大塚家具、スターバックスコーヒージャパンは、それぞれ独自の資格制度を持つ企業である。両社に共通するのは、自社のDNAと伝統の上に形成され、その精神の伝承を底流にすることで、スキルや人間的成長、そして業績の伸張を効果的に、そして能動的な行動として成し遂げている点である。
IDC大塚家具におけるプロフェッショナル制度
大塚家具のショールームでは、顧客1組に対して1人の社員がつく接客スタイルを、1969年の創業以来守り続けている。1993年には、新業態の会員制ショールーム、IDC大塚家具(以下IDC)の1号店をオープンした。価格は値引き交渉なしのワンプライス。顧客は初来店時に会員登録(会費等無料)を行い、いったん会員になると全国に計18カ所ある、どのショールームでも顧客情報が引き継がれる。
IDCのこのシステムは、オープン当時、業界に大きな波紋を与えた。家具業界では「30%OFF」「40%OFF」といった値引率交渉が主流であり、最初から値引きを見越した価格設定をするのが普通だったからだ。そこに「国内最低価格保証」と銘打った、ワンプライス制を持ち込んだIDC に対して、業界内でも摩擦が生じた。しかしそうした志に基づいて、業界の商慣習を打ち破った新しいショールームは成功した。同社は同年以降、すべてのショールームを会員制に変更し、同様のショールームづくりを全国に展開した。
IDCの成功の要となったのは、顧客を案内し、アドバイスを与える社員の質にある。その質を支えるものとして、同社が1989年から導入したのが「IDCインテリアアドバイザー」であった。店員は単に家具を販売する営業担当者ではなく、新築や結婚、リフォームなど、さまざまなきっかけで来店する顧客のニーズを引き出し、プロとして最適なインテリア設計を手助けするアドバイザーであると位置づける。平均接客時間は約2時間。顧客のイメージをより明確にできるよう、フリーハンドで簡単な部屋の間取り図なども描く。顧客が設計図面を持参することも多い。家具を売るのではなく、顧客がそこで実現しようとしている、ライフスタイルの実現をサポートすることを目指した。
当初アドバイザーは、営業力、商品知識、コミュニケーション力、提案力等に優れたベテラン社員を、上司や店長が任命する形でスタートした。任命された証明として、「IDCインテリアアドバイザー」というネームプレートが付与される。
社内資格認定制度が2002年にスタート
IDCインテリアアドバイザーの能力をさらにストレッチし、社員全体のプロフェッショナルとしての能力を高めるため、IDCは2002年に「IDCインテリアプロフェッショナル」と呼ばれる社内認定資格制度を発足させた。それまであったIDCインテリアアドバイザーの上に、IDCインテリアスタイリスト、IDCインテリアデザイナー、IDCインテリアプロフェッサーという、さらに高度な3つの資格を設けたのである。
【レベル1】IDCインテリアスタイリスト
①建物の構造体には関与せず、家具・カーテン・照明・インテリア小物など取替えのきくエレメントを選び、組合せることで、住まい手の個性や感性、趣味、嗜好、ライフスタイルを反映させた住空間を提案できる人。
②営業の知識や技術(商品知識、商品の選び方、接客技術など)を修得し、安定した営業実績のある人。
③礼節・マナーに優れ、気配りができ、お客様より信頼を得られる人。
【レベル2】IDCインテリアデザイナー
①住宅構造や建築、増改築の知識から室内環境、住宅設備などの知識を有し、造作家具や建築部材まで提案を行い、増改築にも関わる。