巻頭インタビュー 私の人材教育論 世界のどこへいっても「誠心誠意」がお客様の心を動かす
社長就任後、すぐに断行した構造改革がひと段落した2005 年、ニチコンの武田一平社長は立命館大学と提携し、研究開発と人材教育との両分野で交流を実施する試みを開始した。
日本ではじめての産学協同による技術者教育の試みと社内講師による営業教育、そして社員教育の根幹に流れる理念についてお聞きした。
伝統と先進性を表した本社ビル
── 素晴らしい本社ビルですね。
武田
2004 年11 月に完成しましたが、京都企業らしさと電子部品メーカーの先進性を表した建物になっているんです。まず全体が京都らしく扇型になっていて、夜の帳が下りる頃ともなると、うすぼんやりと明かりが灯るようになっている。
── 一種の行灯(あんどん)ですね。
武田
業界初の蓄電型太陽光発電システムを、当社の技術者が開発して使っているのも特色です。太陽光を電力に変換・蓄電してビル全体のエネルギー源としているわけです。また、深夜電力を利用して氷を作り、これを冷房運転時の冷媒として使用することで、冷房能力をアップし電力使用量を抑える、というシステムも採用されています。
私は明るいビルがいいということで、ガラスを多く使ったビルにしているのですが、ここにも工夫がされています。「ダブルスキン構造」といってカーテンウォールが二重になっているのですが、断熱・遮音効果にすぐれ、冬などは空気層が暖まってビル全体が“湯たんぽ”のようになります。これが暖房費の節約につながっています。
── 次世代型エコロジービルを謳っているようですね。
武田
照度センサにより、オフィス内照明のコントロールもしています。自然光が充分な場合は、人工照明を抑えて電力消費量を低減させます。また自然換気窓を開放することで、春季・秋季には外気を取り入れ、冷房用エネルギーを低減します。日本経済新聞社の環境賞にも選ばれました。
── 各フロアに“立ち会議室”が設けられているのにも驚きました。いかにも合理主義者の武田さんらしい発想と見ました。
武田
簡単な会議は“立ち会議室”を使うことを勧めています。お茶を入れたりする手間も省けるし、座って会議をすると寝てしまう者も出てきますが、立って会議をすれば寝るわけにはいきませんからね(笑)。「足腰が強くなければ、当社では務まらないぞ」といってあります。
日本初、大学と組んだ技術者教育を実施
── 御社では最近、技術者教育に力を入れているようですが、どの辺にポイントを置いて行っているのか、お話を聞かせていただけますか。
武田
技術者の育成ということでは、大きく2つのポイントがあります。1つはまず採用ですね。第2志望、第3志望ではなく、「ニチコンに入りたい」と第1志望で狙ってくるような学生が欲しいわけです。そのためには知名度を上げていかなければならないし、給与体系なども考えていかなければならない。今そんな努力をしている最中です。
2つめは立命館大学と包括的提携をして、取り組みはじめた技術者教育です。