My Opinion ―③ 技術標準を使ったブレンディング研修の学習設計
研修での「教育効果の最大化」を図るためには、学習設計を立てる必要がある。
その中で、研修目的に沿った研修のゴールを必然的に導くためにブレンディングを考えたい。ここでは、『JMAM社内教育技術標準』を基に、効果的なブレンディングのための学習設計に関する考え方と基本的な進め方を紹介していく。
技術に基づいたブレンディングが求められる
企業にとって「教育効果を最大化」することは、今や重要な戦略課題といっても過言ではない。そして、「教育効果を最大化」する上で研修を単独で行うのではなく、通信教育やeラーニング、アセスメントツールを効果的に組み合わせる「ブレンディング」は極めて効果的な方法論である。
しかし、関係性のある研修、通信教育、eラーニング、アセスメントツールを組み合わせただけでは「最大化」を図ることはできない。「最大化」を実現するためには、「技術に基づいたブレンディング」でなければならないのだ。
「教育効果の最大化」を実現するために、私たち日本能率協会マネジメントセンター(以下JMAMという)では、
①学習設計のための基本コンセプト
②各種教育メディアの組み合わせ効果を高めるためのブレンディング技術
③研修自体の効果を高めるための研修設計技術
などの「技術の標準化」に2004年以降、本格的に取り組んできた。そして、技術を「見える化」し、『JMAM社内教育技術標準ガイドブック』にまとめ、実践に基づく学習成果を盛り込み、改訂を重ねて年度版として発行している(写真参照)。
今回のテーマである“技術標準を使った学習設計(ブレンディング研修の設計手順)”を解説するにあたって、『JMAM社内教育技術標準』にしたがって述べていく。また、学習設計の日本における考え方は、eラーニングを開発する際に用いられてきたが、今回は研修を中心にブレンディングを進めていくことを主眼とするため、研修を中心軸にした解説となることを初めにお断りしておきたい(注:学習設計技術は一般的には「インストラクショナル・デザイン」という)。
学習設計の基本プロセス
ブレンディングの手順を解説する前に、学習設計技術の基本的な進め方を紹介する。
学習設計の基本プロセスは、図表1の「『JMAM社内教育技術標準』による学習設計基本プロセス」で示したとおり、「分析」「設計」「開発」「実施」「評価」の5つのフェイズと10の基本プロセスでできている(『JMAM社内教育技術標準』ではさらに19の基本プロセスに分解して技術化している)。
学習設計の概念なしに研修を企画すると、すぐにカリキュラム(学習内容を時間割にした一覧表)を考えがちである。図表1の基本プロセスを見ていただいたとおり、カリキュラムは開発フェイズの最後に結果として生まれるものである。
今回は、学習設計の5つのフェイズ+10の主要プロセスのうち「分析」と「設計」の5つの基本プロセス(関係者ニーズの分析~構成表の作成)を中心に、その考え方と具体的な進め方を述べてみたい。『JMAM社内教育技術標準』では、このプロセスに「研修設計仕様書」「研修コースマップ」「研修構成表」という3つのツールを活用している(これを学習設計のための“三種の神器”と呼んでいる)。
関係者のニーズを分析しコンセプトを明確化する
学習設計を行う際の第1のフェイズが「関係者ニーズの分析」である。このフェイズにおいて『JMAM社内教育技術標準』で活用するツールが「研修設計仕様書」である。
図表2の「関係者ニーズの分析に使う研修設計仕様書」には、研修を設計する上で最低限知っていなければならない8つの情報、すなわち、①顧客の市場特性、②顧客のビジョン・方針、③参加者へのトップ・上司の期待、④参加者の役割・期待、⑤顧客担当者の問題意識、⑥参加者の研修履歴、⑦研修上の制約、⑧研修体系における位置づけ、を整理するようになっている。これらの情報を整理するプロセスで、関係者の顕在的ニーズと潜在的ニーズが明らかになってくる。
そして、関係者ニーズが明確になったら、研修コンセプトを明確化する必要がある。「コンセプト」というと何か難しい知的作業を行うように感じるが、関係者ニーズを満たすためには“こんな感じの研修をしたらいいのではないか”といったイメージの明確化と捉えていただければ結構である。
研修コンセプトを明文化する際に、以下に示すような研修形態を頭に入れておくと便利である。