提言 人材開発の最大強化のためのブレンディングを
人材開発は投資である。その投資効果の最大化を目指す方法として学習方法のブレンディングが注目されている。“異なる複数の教育・学習方法を組み合わせ、学習目的や目標を効果的・効率的に達成する技術・しくみ”このブレンディングの定義を基に、特集記事を読み解く指針を提示する。
ブレンディングとは
「経営にとっての大事な資産、それは人材だ」
最近、多くの経営者が口にする言葉である。人材や人材の成長こそが組織を活性化し、世の中に貢献することは歴史からも明らかにされている。21世紀型の企業経営では、改めて人材基盤を強化し、次の世代へつなげていくという転換期を迎えようとしている。そこで、注目を集めているのが“人材開発(育成)の最大強化”という課題なのである。
企業が人材開発の強化や最大化を求める時に、必ず「成果は出ているのか?」という問いに答えなければいけない時代になった。かつて「人づくりは10年の計。短期で結果を求めてはならない」という考え方が通用していた。長期的視野で人材を育てることは、日本的経営の強さでもあった。
一方で、短期的視点で成果を強く求められていることも、人材開発現場の事実であろう。この2つの矛盾した課題を同時達成することが、これからの人材における経営課題の達成にほかならない。
では、こうした難題に対して人材開発はこれから、どのような考え方で、どのような方法論で、対処していかなければいけないのか?
その問いかけに対する答えの1つとなるのが、“成果を高めるブレンディングによる人づくり”なのである。ブレンディングとは、「ある学習テーマについて、異なる複数の教育・学習方法を組み合わせ、学習目的や目標を効果的・効率的に達成する技術・しくみのこと」と定義する。
投資vsコスト
人材開発にブレンディングを、どのように活用していくかの前に、長期志向と短期志向を両立するために押さえておきたい大事な考え方を確認したい。それは「人材開発は投資志向である」ということだ。投資効果の最大化、つまり学習成果向上を目指すためにブレンディングを活用していくことがもっとも重要である。
人材に投資をすることを前提にブレンディングを検討しないと、単なるコストセーブの発想のみに陥る。研修コストを下げるためにeラーニングとうまくセットしよう、2日間の研修をとにかく1日に短縮できないか……など。もちろんブレンディングを実現する際には、健全に財務的投資の効率は求めるが、単なるコストダウン発想は避けたい。
ここで重視したいのは、人材開発担当者、現場マネジャーが、人材開発に関して財務的投資に加えて、どれだけの時間と知恵の投資ができるかが鍵を握るのだ。単なるコストダウン発想の企業に一番欠落しているのは、財務的投資の発想ではなく、むしろこうした課題解決に向けた財務・時間・知恵を統合的に投資する志向である。ブレンディングの目的は効果的に成果を高めることにある。これらの統合的な投資志向と、時間軸としての長期・短期の軸で検討しなければならない。
何をブレンディングするのか?
ブレンディングはどのようにして時間と知恵の投資に貢献できるのか、そのための対象は何かを明確にしなければならない。当然のことであるが「学習」をブレンディングするのである。多くの人材開発担当者は、教育ツールのブレンディング程度と考えてはいないだろうか。あくまで「学習」をブレンディングすることが基本である。単なるツールの組み合わせだけがブレンディングなのではない。
ブレンディングを考える前に、まず、考えなければならないことは、「お客様のニーズは把握できていますか」という問いかけだ。
「お客様って、何?
人事や人材開発部は経営の中枢です」。こんな発想になっていないだろうか?
人材開発担当者にとって現場従業員や経営者は、まぎれもなく内部顧客なのである。こうした考え方がないと、顧客不在の独りよがりの人材開発になってしまう。人材開発担当者はニーズ把握ができているだろうか?
また、経営者がお客様ならば経営課題、事業課題要請として「わが社にとっての経営・事業課題は何か?
この課題解決を人材面でどのように解決すべきか?」などの問題意識を明確にし、設定すべきテーマと企業価値観(理念・ビジョンなど)との整合性と一貫性を持ってテーマを検討して全体プログラムを設計しているだろうか?