連載 調査データファイル 第74 回 雇用・人事システムの構造改革 中小企業の人材育成Part4
知名度の低い中小企業では人材の採用難が続いているが、どのような採用方法を選択していけばいいのだろうか。
そして、採用後の離職に対して、いかなる定着対策・教育が必要なのだろうか。
調査データをもとに、これからの中小企業の人材育成のあり方を検証していく。
1. 人材の採用方法
大都市圏を中心として人手不足が深刻化しており、知名度の低い中小企業は、人材の採用が非常に難しくなってきている。労働市場の全体的な人手不足に加えて、求職者の大企業志向が強まっていることが、採用難に拍車をかけている。こうした中で、中小製造企業は、どのような採用活動を展開しているのであろうか。
2006 年7 月に雇用情報センターが行ったアンケート調査結果(有効回答1555社)によれば、採用難の中で製造関連職場の人材に関して、今後どのような採用方法を積極的に活用していこうとしているのかを見ると以下のようになっている。最も回答率が高いのは「ハローワーク」(80.1%)であり、次いで「学校や教員の紹介」(43.8%)、「会社関係者やその友人・知人の紹介」(37.8%)、「自社ホームページの求人情報」(25.9%)、「新聞、チラシ、タウン誌などの求人情報」(24.7%)、「就職説明会」(22.1%)、「就職情報誌や業界誌、専門誌」(16.3%)、「民間の職業紹介会社」(15.8%)、「紹介予定派遣(正社員採用を前提とした派遣)」(15.0%)、「トライアル雇用」(13.9%)、「インターンシップ制」(12.6%)などとなっている(図表1)。
中小製造企業が活用しようとしている採用方法は、ハローワーク、学校・教員、友人・知人、就職説明会など従来型のものが中心であり、ホームページ、紹介予定派遣、トライアル雇用、インターンシップ制といった比較的新しい方法は、活用しようとする企業が少ない。人材の採用が楽ではない中小製造企業だからこそ、多様な採用方法を活用すべきであるが、実態としては従来型の採用方法が中心となっている。
こうした背景には、地方に立地する企業の実状を調査すると、ホームページで求人情報を掲載しても、まったく反応がないというところが多い。こうした地方の中小企業は、ハローワークや学校からの紹介、「ふるさと就職フェア」を活用した面接会などで採用しているというのが実態であり、官依存の人材採用となっている。