クローズアップ 米国サザン・カンパニー社 妥協を許さないダイバーシティへの取り組み
アメリカ南部の主要都市アトランタに本拠を置くサザン・カンパニー(Southern Company)社は、ジョージア州、ミシシッピ州、アラバマ州、フロリダ州の南部4 州に電力を提供するエネルギー関連企業(5 社の電力会社を含む)を束ねる持ち株会社である。社員数2 万6000 人、2006 年度の売上高144 億ドル(約1 兆7500 万円)を誇る同社は、ニューヨーク証券取引所に上場しており、2005 年フォーチュン500(アメリカ売上上位500 社)の165 位に名前を連ねる全米最大規模の電気供給業者である。南部という人種問題の根深い地で、さまざまな人材を受け入れて事業を展開する同社のダイバーシティへの取り組みについて、その考え方や具体的な内容を紹介する。
ビジネスにインパクトをもたらすダイバーシティ
アトランタの中心街に建つ真新しい本社ビルの会議室に通された時、早くもこの会社のダイバーシティへの取り組みを実感した。フロアは完全なバリアフリーであり、すべての部屋の入口に掲げられたプレートには点字が施されている。そのような何気ないオフィスのたたずまい1つをとってみても、身体の不自由な方への配慮がうかがえる。
そんなダイバーシティへの徹底した取り組みの理由について、ダイバーシティ・インクルージョン担当マネジャーのマット・ボバー(Matt Bobar)氏は、「単なるCSR(企業の社会的責任)としてではなく、すべてがビジネスそのものに大きなインパクトを与えるから」と言い切る。その言葉の裏には、多様な人材を受け入れざるを得ないアメリカ南部という地域性や、現代アメリカが抱える労働環境など、おおよそ日本社会では考えにくい特殊な事情があるようだ。
多様性の国アメリカにおけるダイバーシティの現状
かつてアメリカでダイバーシティと言えば、もっぱら「アフリカ系アメリカ人と女性という社会的弱者を救済する」取り組みととらえられていたが、最近は障害者や高齢者に加え、アメリカ社会で発言権を増しているさまざまなマイノリティー(たとえば、ヒスパニック系やアジア系アメリカ人、退役軍人、同性愛者など)すべてを包含する考え方に変わってきた(図表1)。