My Opinion ―② リーダー育成に効果的なプロジェクトの「修羅場」経験
プロジェクト活動では、時には自分たちで目的やゴールまでも定めるような難しい仕事を、いろいろな部署から集まった固定されないメンバーが、ほかの仕事と並行して短い期間で行う。
ここで必要とされるのは、環境変化の激しい中でリーダーシップを発揮できるリーダーであり、逆に言えば、プロジェクト活動はリーダー育成において格好の場となる。
プロジェクト・ベースド・OJTでのリーダーシップ開発の有効性について考えていく。
仕事が仕事を教えてくれる
「やって見せて、言って聞かせて、やらせて見て、ほめてやらねば、人は動かず」
この言葉は、理想的なリーダーとして名高い大日本帝国海軍の山本五十六氏が、部下を指導育成する心得を言い表したものだ。山本五十六氏は、アメリカを相手にした太平洋戦争という難局で、帝国海軍の方針策定や艦隊の指揮において優れたリーダーシップを発揮し、部下の信望も厚かったと言われている。
上司は、まず部下の前でお手本を見せ、やり方を説いてから、部下自身にやらせてみる。そして、上手くできたら褒める。これが部下を動かす基本だと、山本五十六氏は唱えているわけだ。この考え方は、企業のOJTにも通じるものではないか。
筆者自身のことを振り返ってみても、実践の場で上司が教えてくれたコツ、顧客に接しながら考え実行した工夫、「こんな仕事をしたい、こんなサービスを提供したい」という思いから試行錯誤しながら得た体験などが、今の自分を形作ってくれたと思っている。いわば、仕事が仕事を教えてくれたのだ。
リーダーシップの実践的な研究を行っているミロンガー社が行った調査で、企業の経営幹部に「リーダーシップを発揮するうえで有益だった経験は何ですか」と尋ねたところ、「仕事上の経験」が7割に達した。それに対し、上司や顧客などとの「関係」は2割、「研修」は1割を占めているに過ぎない(出所:『リーダーシップの旅』(光文社新書)野田智義・金井壽宏著)。
OJTの良さは実践を通じた暗黙知の習得
ここで、Off-JTとOJTのそれぞれの良さを整理してみよう。
集合研修に代表されるOff-JTの良さは、主に次の3つだ(図表1)。
①日常の業務では接しない人が、さまざまな視座や視野から刺激を与えてくれる
②形式知化され体系化されたノウハウや知恵を、短期間で効率的に学ぶことができる
③参加者同士が同じ経験を通じて、相互啓発を促しネットワークを築くことができる
これに対し、OJTの良さは、主に次の3つだろう。