座談会 業務を通じて学ぶオンサイトのアクションラーニング 高い成果と育成を両立させる プロジェクト・ベースド・OJT(P-OJT)
OJTは人材育成の基本とも言える手法ですが、その内容が今大きく変化しています。
かつてのOJTはルーチンワークを学ぶものでしたが、現在はプロジェクトを実際に進める中で、周囲の巻き込みやアウトプットの出し方などを学んでいくプロジェクト・ベースド・OJT(P-OJT)とも言うべき事例が先進的な企業でみられるようになりました。従来のOJTとP-OJT の違いは、前者は時間軸が長く、メンバーの多様性が低いのに対し、後者は時間軸が短く、メンバーの多様性が高いこと。
さらに不確実性が高く、短い期間でプロジェクトの成果を出すことが求められます。
P-OJT は社内にとどまる場合と社外を巻き込むケースがあり、さらに部門内プロジェクト、他部門のメンバーが含まれるクロスファンクショナルチームプロジェクトに分かれます。
また社内で公式に宣言されるものと、インフォーマルなものがあります。
ジェネックスパートナーズとソフトバンクテレコムで、実質的にP-OJT に取り組んでいらっしゃるおふたりとともに考えていきたいと思います。(船川淳志)
プロジェクトで学びつつ短期間にアウトプットを出す
短期間、多様性、不確実性そして結果を求めるP-OJT
西村
ソフトバンクテレコムでは社内外を問わず、2005年にすべての業務をプロジェクト形式で進める方針を出しました。プロジェクトマネジャーの最初の関門は必要な人材を集めること。特に社内プロジェクトの場合、旧来の組織の壁もあり、タイムリーに最適な人材が集められないことがあります。すべてのメンバーは日常業務も抱えながらの兼任であり、プロジェクトと日常業務、両方の効率性を高めることが求められます。
船川
社内プロジェクトのほうが一見簡単に思えますが、スタッフィングなど特有の難しさがあるわけですね。
西村
ええ。マネジャーには自分のプロフェッショナルとしての専門性を高めると同時に、当然ながらラインマネジメント能力も必要です。社内の利害関係が複雑ですし、今では他社との合併があったり、中途採用なども継続的に行っていますので、社員のカルチャーもさまざま。メンバーをその気にさせるのも一苦労です。
P-OJT で変化するのは業務進行に関する考え方
永禮
ジェネックスパートナーズは、変革リーダー育成や企業変革に関するコンサルティング、各種研修などを提供している企業です。企業変革の活動は、当然ながらプロジェクトベースになります。私たちは社内でクライアントの変革を手伝うプロジェクトチームを組み、クライアント側にもプロジェクトチームが組まれます。
最近では次世代リーダーとしてある程度の人数が集められ、アクションラーニングとして進めるケースが多くなりましたね。短くて3 カ月、長くて1年程度をかけ、具体的なテーマをプロジェクトの中で解決していくのです。Off-JT と集合研修を複合した、ハイブリッド型の学習も行っています。
船川
アクションラーニングはかなり定着してきましたね。しかも、かつてはオフサイトで行っていた活動が、オンサイト、つまり組織内に入り込んできました。そもそもP-OJTは、組織内アクションラーニングにならざるを得ません。
永禮
今年になっていくつかのトップ企業が、人材育成と同時に成果を求めるアクションラーニングを始めています。集合研修という閉じられた形ではなく、実際に現場で担当役員と討議したり、部下を巻き込んで情報を吸い上げたりといったことを進めながら、自身のリーダーとしての能力を伸ばしていくのです。すでにP-OJTは、スタートしていると言っていいでしょう。
西村
当社の状況も同じです。プロジェクト制を導入した当時は、完全フリーアドレス制導入と同時に全課を廃止して組織をフラット化、社員をオープンな状態に置きました。あらゆる業務はプロジェクト登録を行い、リーダーが立ち、メンバーを割り当て、一定期間プロジェクト活動を行う体制を整えたのです。その時、組織のマネジメントには人材育成の責任とアサイメントの権限を、プロジェクトリーダーにはプロジェクトメンバーの貢献度評価権限をもたせた人事制度を導入しました。同時にプロジェクトリーダーを育成する学習環境も用意しています。
当初は多くの社員が戸惑ったと思います。それまでの仕事の進め方やサービスの提供の仕方をガラリと変えなければならなかったのですから。この改革の本質を、社員が理解するまでには時間がかかりました。業務としてのプロジェクトと並行して、コミュニケーションチームと研修チームが一緒になって、動機づけを促すためのプログラムを展開し続けてきました。