連載 コンプライアンス教育を考える② 危機に強い経営トップを育て、不祥事から会社を守る
危機は突然やってくる。
それに対し、企業のトップはどんな対策を講じるべきなのか。
2回連載の後半では、企業の成長段階から発生しやすい問題を提起しトップはいかに対応すべきか、そして、危機的状況で必要なリーダーシップとはいかなるものかを提示する。
「若さによる甘え」は認められない
企業が不祥事によって社会から批判を浴びた時には、トップ自らが先頭に立ち、会社と事業を守らなくてはなりません。危機は突然やってきます。その時、貴社のトップは、社会ときちんと向き合うことができるでしょうか?
近年、特に多いのは、急成長企業が不祥事を起こした場合、必要な情報が入手できず、整合性の取れた説明ができないまま、ボロボロになってしまうことです。現在は、創業から数年で株式を上場する企業が多いのですが、そういった企業では、事業の成長性や採算性が優れていても、組織としての成熟度はまだまだです。
私どもがお手伝いした企業の中にも、次のような状況の会社がありました。依頼を受けた時には、すでに社会的に大きな影響力を持ち、新聞などのメディアでもよく名前を見かける企業になっていました。人も資金も次々と集まる状態で、経営トップ以下、社内では自分たちの無限の可能性を信じる全能感が満ちていました。
しかし、いざ問題が起きると、その自信はどこへやら。「若さゆえのルール違反は、社会から許容されるだろう」という楽観論と甘えを多くの人が口にしていました。けれども、現実には、誰にも擁護されることはなく、社会からの痛烈な批判を浴びることとなったのです。
急成長企業に発生する問題
急成長した企業では、組織の中にきちんとした統制システムができていないがゆえに、トップが進んで自らを厳しく律しておかなければなりません。ただ、企業の成長段階に応じて発生する特有の問題がありますので、そこに気をつけておけば、かなりの問題を制御することが可能です。
一般的な成長プロセスとしては、
①事業があたって儲かる
②株式上場などにより、会社も個人も資金面で余裕ができると、新しい挑戦を望むようになる
③会社が社会的にも認められ始めると「自分たちにできないことは何もない」というような全能感に陥る
④ところが、いざ大きなことを実行しようとすると、既成勢力や規制に跳ね返され、自社は社会の中で小さな存在であることを思い知らされる。それにより、「今に見ていろ!」といった反骨精神が芽生える
⑤そこで、株価を上げて時価総額を高めることで、一気に強い企業になろうとする。高い利益を追い求める