企業事例 日本アイ・ビー・エム人財ソリューション 新人自ら成長目標を立て、上司、先輩、仲間に アドバイスを仰ぐ「誓いデータベース」
2006年より、新入社員研修で自らの成長目標(誓い)を立てさせるようになった日本アイ・ビー・エムグループ。その気持ちを持続させるように、2007年からはLotus Notesの機能を使って「誓いデータベース」を展開している。
所属長やアドバイザー、同期のグループメンバーからのフィードバックも可能にし、新人社員が自主的に活用できる仕組みを実現。その取り組みについて取材した。
熱い思いを忘れさせない「誓いデータベース」
コンピュータに関するハードウェア、ソフトウェア、各種サービスおよびビジネスコンサルティングを提供するグローバルカンパニーとして、20世紀に最も成功を収めた企業の1つであるIBM。近年では大胆な組織改編も行われ、イノベーティブな価値を創出し続ける組織として、その動向には常に注目が集まっている。
こうした組織にあって、柔軟性に富んだクリエイティブな人材はいかに育成されているのか。IBMの日本法人である日本アイ・ビー・エムでは、今年度から新入社員研修に「誓いデータベース」という新しいツールを導入した。このツールはコミュニケーションを通じて、自ら学ぶ意識を喚起し続けることを目指したものだと、日本アイ・ビー・エム人財ソリューションの高橋宏明氏は述べる。
「2006年度から新入社員研修の最初のコースとして、IBMグループの社員であるIBMerとしての基礎を学ぶ『ビジネス・パーソンの基礎(BPI)』研修をスタートさせました。コースの最後に今後の誓いを紙に書かせ、熱い気持ちで所属部門に帰る。当初はあちこちで『今年の新入社員は違うね』という声が聞かれ、研修の手応えを感じました」
ところが研修から約1カ月、5月の連休が明けた頃には、例年通り「『今年の新入社員はなってない』と言われるようになりました」と高橋氏。「せっかく研修で気分が盛り上がっても、その気持ちを継続的に振り返り、目標に向かって自分を高めていく仕組みがなかった。2006年度の反省を受け、2007年度に導入したのがこの『誓いデータベース』なのです」と説明する。
誓いデータベースは、グループウェアのLotus Notesの機能を使ったシステム。これに受講生個人個人が目標(誓いの内容)を入力する。目標は2007年の自己成長イメージであり、年末までにどのようなIBMerになるかを定めるものだ(図表1)。
次に、その目標を実現するために、どういったコンピテンシーを強化する必要があるのか、具体的に3つの項目をあげる。コンピテンシー項目は「IBM Foundational Competencies」、すなわち「IBMers Valuesを支える特性および行動特性」として規定された項目の中から選ぶ。
さらにそのコンピテンシーを実現するための具体的な行動基準を設定する。この行動基準が年間の中間レビュー、年末レビューのコンピテンシー評価と連動している。
「基本的な目標セットの仕方も研修で学びます。行動基準はそれにならい、“こういう目標でこういう行動をすることによりこういう成果を実現する”といった書き方になるよう指導します」(高橋氏、以下同)
たとえば、強化するコンピテンシー「お客様と信頼関係を築く」に対する行動基準は、「職場の電話は率先して出るようにし、先輩社員が不在の場合は、用件を正しく聞き、迅速・正確に伝えることで、信頼を得る」などとなる。