企業事例 角川クロスメディア 利用率37%で予想外の効果。 社内SNSの成功のカギは“敷居の低さ”
社内でのコミュニケーションツールとしてSNSを利用する企業が増えてきた。
出版からネット事業まで手がける角川クロスメディアでも、2006年12月にSNSを導入。
間もなく1年を迎えるが、その効果がいろいろな形で現れてきているという。
社内コミュニケーションのツールの1つとして、SNSは今後標準化されるのか。
その効果や課題を探るべく、角川クロスメディアでSNS活用を推進する2氏に話を聞いた。
社内SNSの導入で事業間の垣根を取り払う
角川クロスメディアは、角川書店が持っていた雑誌・広告事業と、関連企業が行っていたネット事業、そして角川書店北海道が合併して誕生した新しい会社である。雑誌のみならず、インターネットやモバイル端末向けのコンテンツなど多様なメディアを通じて、ざまざまな情報を提供している。
同社は昨年12月、社内ネットワーク上にSNSを導入。合併間もないこともあり社員同士のコミュニケーションを活性化すること、そして雑誌という紙媒体とネット事業をいかに融合していくかということ、さらに、北は北海道から南は九州にまで展開される事業所間で情報の共有や交換を円滑に行えるようにすることを狙い、導入を決めたという。
IT開発部取締役部長の栢口(かやぐち)茂氏は、「なぜSNSかと問われると、みんなが気軽に利用できるものであること、そして内容がオープンであることが大きな理由です。それまでも社内掲示板は存在していましたが、それではコミュニケーションが常に“全体”対“全体”になってしまい、使いづらい面がありました。SNSであれば、そういった使いづらさも感じさせないのではないかと考えたのです」と語る。
角川クロスメディアでは、出版、広告、IT、通販と事業内容が多岐にわたり、さらにその事業の下で多くの小規模なプロジェクトが展開されている。その中で、アイデアの共有や企画力の強化は大きな課題となっていた。
SNS導入にあたっては、担当者がすべての事業所へ足を運び、説明会ならびに操作指導を行った。そこでコミュニティのつくり方やテーマについては自由であることを伝え、自発的な運用を促した。その結果、現在では37のコミュニティが動いている。
「SNSに参加するためのIDは全員に配布しています。社員だけでなく、アルバイトやパート勤務などそれ以外の雇用形態の方たち、総勢約400名すべてに付与しています。一般的な招待制にすると、IT リテラシー(ITを使いこなす能力)の低い人たちのところまで行き渡らない可能性が高いからです」(栢口氏)
紙媒体で働く社員とウェブ媒体で働く社員ではITリテラシーの差がどうしても出てしまう。これからのネット時代に向けて、これらの格差をなくしていこう、というのもSNS導入の大きな理由だった。しかし、始め方はいたってシンプル。“まず、始めてみよう。そうすれば何かが見えてくるはず……”という、いわば手探りの状態であったため、当初は明確な効果は期待していなかったという。