連載 現場教育の落とし穴 最終回 “ わかった気”の落とし穴 本当の理解にはアクションが伴う
現場教育を支援する立場での悩みは、研修や現場で、大切なポイントなどについてわかりやすく説明すればするほど、“わかった気になる人”が出現することだ。真意を理解せず、わかった気にだけなっていると、その人自身や職場への問題認識が進まない。結果としてその情報が活かされず、能力開発や問題解決も進まない。そこで、今回はこの“わかった気”を防止するためにはどうしたらいいかという話をしたい。“わかった気になっている人”の特徴は、聞いているだけで何のアクションも取らないこと。情報を聞いただけでわかった気になっているのだ。こうした人にはまず、メモを取るアクションを勧める。耳から入った情報は人間の脳の中で短期記憶として処理され、一瞬にして消えてしまう運命にある。だが、メモを取ると、ただ聞くだけとは異なるインプットと認識され、短期記憶から長期記憶に昇格するのだ。
しかし、情報が記憶され頭の中に残っただけでは、本当にわかったことにはならない。そこで次に「自分の言葉で説明するアクション」を勧める。得た情報を人に説明すると、何が自分は理解できていて、何が理解できていないかを自覚できる。説明することで情報のレベルが“ 記憶レベル”から“理解レベル”へと変化する。
では、理解し、説明できるようになるだけでいいのかというと、これでも足りない。頭の中で理解できたことと、実際の現場で実践することは違うからだ。それに気づかずわかった気でいる人には、有無を言わせず実践させる。頭で理解したこととは違うことを多く経験すれば、実践の難しさ、前提条件の整備や現場でのコンセンサスの必要性を実感することになる。そして“本当にわかったレベル”に近づいていく。
ここで筆者がコンサルティングや研修の際に実践している “わかった気”を防ぐ方法を紹介しよう。