連載 部下が伸びる上司の心得 第3回 何度言ってもできない部下には 目標を共有して叱るべし
「何回同じことを言わせるんだ!」
「こんなこと常識だろうに……」
「学校で何を勉強してきたんだ?」
何度言ってもできない部下に、イライラすることはありませんか?
上司の中には、このイライラがやがて「怒り」という感情的な反応となって、表情や物言いに現れてしまう人もいます。一方で、イライラを抑えようと部下を客観視し過ぎる上司もいます。たとえば、「あいつは学習する能力が低いやつだから……」「あいつの性格では、もともとこの仕事は無理だろうな」「いまどきの若者の価値観は理解に苦しむよ」――こうしたセリフが頭に浮かぶようであれば、「自分の責任ではなく部下自身が原因なのだ」と、“他責”によってイライラを抑えようとしています。こうなってしまっては、事態はそう簡単には収拾できません。そこで今回は、何度言ってもできない部下にも効き目のある「叱り方」について考えてみたいと思います。
知識の問題か意欲の問題か
『心理学辞典』(有斐閣)には、「叱る」とは、「挽回への励まし」とあります。言うなれば、上司が部下を叱るとは、何らかの理由で部下が目標に向かえていなかったり、目標から逸れてしまっている時に挽回させる――つまり、部下が自らの力でこれまでの仕事のやり方を変え、再び目標に向かえるよう、部下のモチベーションを高めるということになります。よって、上司が部下を叱るためには、部下が目標に向かえる状況にあるかどうかを把握する必要があります。
具体的には、何度言ってもできない部下については、やり方を知らないのか? それともできるのにやらないのか? を見極める必要があります。そしてこの見極めにより、部下へのアプローチも異なります。