連載 調査データファイル 第100回 バブル崩壊後のコスト削減がもたらした教育訓練の希薄化を考える 教育・能力開発投資の停滞が 日本企業の成長力を奪う
日本における教育費は、アジア・欧米など諸外国に比べてかなり低い。
学生のみならず企業の教育も同じ傾向にあり、それは、若年層の学力や職業訓練機会の低下を招いている。
日本の若者の学習意欲の低下や失業率を嘆く向きもあるがそれを招いたのは若者たちではなく、国や企業の施策であることは明白だ。
このままでは、日本は国際社会の競争に生き残ることは難しい。
日本の国力衰退スパイラルはすでに始まっていると言っても過言ではないが、それに歯止めをかけるのは、他でもない教育そのものなのではないだろうか。
1.キャリア形成に悪影響を1及ぼす若年期の長期失業
景気回復の兆しが見えてきたが、雇用情勢は相変わらず深刻であり、特に失業が長期化する傾向が強まってきている。失業が長期化すると、失業者の仕事復帰への熱意が弱まってくるとともに、職業能力や体力の低下が著しくなる。その結果、長期失業者の多くは目の輝きが失せ、採用面接を通過するのが難しいといった状況に陥り、ますます再就職が難しくなるといった悪循環にはまってしまう。
最近は、こうした失業の長期化が、若年層でより顕著になってきている。総務省「労働力調査」によれば、平成20年と21年の失業期間が3 カ月以上の完全失業者を年齢階層別に比較すると、最も増加しているのは25~34歳の若年層であり、たった1 年で15万人も増加して57万人に達している(図表1)。
さらに深刻なのは、失業期間が3 カ月以上の完全失業者のうち、1 年以上の長期失業者が増加していることである。ここでも25~34歳の若年層の増加が顕著であり、平成20年22万人、21年26万人と4 万人の増加。対象者数、増加人数ともにすべての年齢階層中、最も多くなっている。なお、OECD(経済協力開発機構)によれば、2008年における失業者全体に占める1 年以上の長期失業者の割合を見ると、日本は33%に達して、加盟国平均の26%を大幅に上回っている。
25~34歳は職業生涯を通じて最も重要な時期で、学校を卒業してから適職探しの期間を経て、本格的な職業能力の基礎を形成する期間である。この時期に失業が長期化するということは、キャリア形成に重大な悪影響を及ぼすことになる。とりわけ、転職が活発になったとはいえ、正社員としての長期安定雇用の入口が若年層に限定されているうえに、中途採用の条件が即戦力重視の傾向を強める下では、25~34歳の時期にしっかりとした職業能力の形成に失敗すると、長期的に不利な状況に置かれる可能性が高くなってしまう。
各種の調査結果を見ても、この時期にフリーターや失業の長期化、派遣労働者としての短期的な就業を繰り返すといったキャリア形成を体験してしまうと、正社員としての就業はかなり難しくなり、大半の者が「年長フリーター」になる。中には職と住居を一挙に失い、ホームレス化するといった最悪の状況に陥る者も、近年では数多く出現している。