座談会 4社の人事・人材開発担当者が探った どう育てるのか? Under30の中堅社員
近い将来、企業の中核を担うのは、26~30歳頃までの中堅社員である。
現在、企業で働く“Under 30”の彼・彼女らは、“3年で辞める大卒新人”がピークとなり(2005年)、
成果主義が見直される一方、プレイングマネジャーが急増したと言われる2002~2006年に入社してきた。
また、経営課題の中で管理職のマネジメント力を問題視する傾向も、2005年から顕著になってきている(日本能率協会調べ)。
こうした時代背景の中で入社し、育ってきた彼らをさらにストレッチするには、何が壁となり、どんな打開策が考えられるのか。
中堅社員に対し積極的な育成に取り組む、4社の人事・人材開発担当者の座談会から、いくつかのヒントが垣間見られた。
就職環境や上司が中堅社員の質に影響!?
司会(蕪木)
本日は中堅社員の育成について想いをお持ちの人事・人材開発ご担当者にお集まりいただきました。早速ですが、今の中堅社員を見ていてどんなことをお感じでしょうか。
山下(日本精工)
現在25~30歳の若手・中堅社員が入社したのは2002 ~ 2007年に当たりますが、2003 ~ 2004 年は採用人数をかなり絞った時代。かたや2005 年以降は大量採用の時代です。両者を比べると、就職環境が厳しかった前者の世代のほうが頑張っているな、という印象はありますね。今年度の新人もかなり厳しい就職戦線をかいくぐってきていますが、2 年前の新人よりグッと顔つきが引き締まっているように感じます。就職環境が与える影響は大きいのではないでしょうか。
佐藤(東芝ソリューション、以下東芝S)
確かに就職活動時期の意識の差は、入社後にも気の“緩み”などとして現れているかもしれませんね。
山下
そうなんです。新人の頃も研修中に居眠りをしたり(笑)、課題のレスポンスが悪かったり。「なかなかやるな」という人間は、聞けば、大抵就職環境が厳しかった年に入っていることが多いんです。
増田(イオンマルシェ)
それから、今の中堅の世代はコミュニケーションや根回しが不得手なんですよね。縦、横のつながりをうまく使って問題解決することがどうも苦手なようです。能力のばらつきが大きい年代のようにも思います。2007 年にイオンリテールで新人教育を担当していたことがあるのですが、その後の彼らの様子を見ていると、伸びている人とそうでない人がいるように感じます。
司会
入社4 ~ 5 年目にもなれば、一通り仕事がこなせるようになる時期です。しかし、そこからの成長度合いは、人によって差があるようですね。「これくらいできればいいや」と納得してしまう社員と、悩んでもがき続けることで、その後伸びる社員とがいる。こうした差についても、年代的にばらつきがあるようです。
増田
確かに、何かとばらつきが目立ちますね。育成環境の問題なのか、それともそもそも採用時点での資質に問題があるのか。つまり、それまでと採用基準を変え、幅広い層を受け入れたために、その後の開きが大きくなっているでのはないでしょうか。
山下
2005 年頃から、管理職のマネジメント能力のばらつきが顕在化してきたと言われています。ひょっとすると、中堅層の成長のばらつきは、上司のマネジメント力のばらつきとリンクするのかもしれませんね。2003 ~2004 年入社で、能力の高い“スーパーマン社員”数人に話を聞いたのですが、一様に「上司の導き方がとても良かった」と言うんです。むちゃくちゃ厳しかったけれど、その代わりしっかり鍛えてくれたと。
佐藤
そうですね、上司の導き方にも要因があるのかもしれません。仕事がこなせるようになった後に、技術の専門力を磨くことはもちろん大切ですが、それだけでなく、人間的な魅力を兼ね備えた人材になるためには、上司の働きかけや上司自身の人間力によるところが大きいと思います。
専門性やキャリアが中堅社員研修の主流
司会
こうした中堅層に対して、具体的にどんな人事・教育施策をとっているかを、それぞれお聞かせ願えますか。
佐藤
当社東芝S では、中堅層に限らず、教育について手厚く施策を行っているという自負があります。3 年目までは技術の基礎を固め、4 年目からそれぞれの専門性を深めるべく、いろいろな教育コースを用意しています。そのマイルストーンとなるのが、入社6 年目の社員を対象に行う研修「ファイブエキサイティング教育(入社5 年経過者教育)」です。内容は、何かを教え込むというより“気づき”を促す仕組みとなっています。経営幹部から期待の声を直接聞く機会でもあるとともに、同期がお互いの成長を確認する機会でもあります。同期と言えども、5 年経過すると成長度合いに大きな差異が目立ってきますので、本研修を通してそれを感じて、自身の成長について気づいてもらっているのです。
山下
日本精工では5 年目の社員を対象に「キャリア研修」を実施しています。今後、プロフェッショナルな分野のスキル、知識を深め、専門性を追究していくのか、あるいはマネジメントにウエイトを移していくのかを、この研修を通じて考えてもらいます。期間は2 日間。360 度アンケート調査を実施し、研修の場でフィードバックしたり、上司に書いてもらった手紙を読ませたりと、自身を振り返る仕掛けをあれこれ用意しています。また、専門別の階層別教育も行っています。やはり5 年目はひとつの折り返し地点なので、新たな気持ちで成長して欲しい、という願いがありますね。