HR Technology Conference2017レポート デジタルテクノロジーは 人事をどう変えるか
「HR Technology Conference2017」は、10月10日から13日まで、米国ラスベガスで開催された。
今年で開催20周年を迎えた本カンファレンスには、世界41カ国9000名が参加。
出展社数は425社と、過去最多となる盛り上がりを見せた。カンファレンスに参加したHRテクノロジーコンソーシアム(LeBAC) 理事の小野りちこ氏が、内容をレポートする。
HR Tech2017の主要テーマ
私は2004 年から過去5回、このカンファレンスに参加している。13 年前は日本人参加者は会場に皆無だったが、今年は100人弱の参加者がおり、日本でも注目され始めていることがうかがえた。また、HRに関する展示を行ったスタートアップベンチャーは50社もあり、年間で240億ドルと、前年対比60%増の投資額だったことも、特筆しておきたい。
今年のカンファレンスは「デジタルテクノロジーによる破壊的イノベーション」をテーマに、12のカテゴリーでブレークアウトセッションが設けられた(図1)。中でも、最もセッションが多かったのは、「CoreHR & Workforce Management」だった。日本では、ようやく全社展開でタレントマネジメントを導入する必要性を問われているが、北米では既に「Core HR」に「タレントマネジメント」を含めて考えられていたのだ。コア人事システムとタレントマネジメントシステムが別では、データを統合する保守運用に負荷がかかる。したがって、人事の業務負荷を下げることができる統合ソリューションが必要とされているということだ。
さらにクラウド型のCore HRであれば時代の働き方に合わせてシステムがアップグレードしてくれるので、ユーザーの運用負荷は下がる。多様化した個々の働き方に合わせたシステムを導入することによって、人事のトランスフォーメーションが効率的に進み、労働市場の変化に伴うリフォーメーションが迅速に実現するのである。
多様化した働き方とは、フリーランス、期間限定(gig)、遠隔地、委託、時短といったことをさす。次の10年はさらに異文化、クロスボーダー、ダイバーシティに合わせた多様な働き方を管理しなければならない。そのような機能と、ソーシャル、モバイルといった最新のテクノロジーを組み合わせて、経営・人事と社員をつなぐシステムとして、どうあるべきか。「Core HR & Workforce Management」のカテゴリーでは、そのような内容が紹介された。
ラズロ・ボック氏の基調講演
基調講演「From Moonshots toRoofshots」を行ったのは、LaszloBock 氏である。彼は2006 年にGoogleに入社し、同社の従業員を6000人から6万人に増やす過程でGoogleの人事システムを設計、進化させてきたCHRO(最高人事責任者)であり、2015年にヒットした書籍『WORK RULES !』の著者でもある。
彼は、イノベーションを促進するための秘訣について話した。まず組織が生産的で革新的な従業員を増やすために大切なのは、壮大で挑戦的、つまり“Moonshot”な目標を持つことだという。彼は「トップパフォーマーに賞金と公の賞賛を授けることで、他のメンバーにも同じようなレベルの達成をしたいという動機を与えることができるのか?」という問いに対し、「これらのアプローチはしばしばうまくいかず、実際には逆効果になる可能性がある」と話した。
では、どのようにすべきなのか。それは何かを10%良くしようと目標を立てるのではなく、現状より10倍の結果を手に入れる目標を持つことだという。10%の目標の場合、既存の概念にとらわれ現状の手段の改善を進めようとするが、それでは多くの場合、人は以前と同じところで停滞し続けることになる。それに対して10倍の結果を手に入れるとなると、どうしても壮大な創造性が必要になってくる。
アポロ計画の月面着陸(ムーンショット)のような偉業は、そんな壮大な創造から実現した。開始当初は、成功に至る明確なアイデアはなかったが、それでも開始から10年もしないうちに、何世代も成功することができなかった夢を実現した。壮大な挑戦こそ、人がイノベーションを起こすことを可能にするのだ。
そして「あなたの従業員を信頼し、恐怖を大幅に軽減することこそが、経営者と人事が努力すべきことである」とボック氏は述べ、組織の革新と生産性を向上させ維持するための「6つのこと」について説明した。
以下、その内容を紹介しよう。