JMAM 通信教育優秀企業賞 表彰企業事例報告 ブラザー販売 ワーク・ライフ・マネジメントに 通信教育を活用
2度の大きな構造改革を断行し、現在の姿となったブラザー販売。
改革により顧客が変わり、扱う商材も一新された。その過程で社内の人員構成に大きな偏りが生じ、教え手となるべき年齢層の社員不足が課題となった同社では、通信教育を学びの手段として採用した。
組織改革に伴う教育の強化
「ブラザー販売は、ブラザーグループの国内販売会社ですが、ある時期を境に扱う商材が大きく変わりました。当初手がけていたのはブラザーミシンの訪問販売でしたが、社会状況の変化により、ミシンの訪問販売というビジネスが成立しなくなったのです」と、取締役の小原啓寿氏は歴史を振り返る。
ミシンという製品そのものへの需要が減ったうえ、訪問販売という販売スタイルも時代に合わなくなった。訪問販売事業を縮小し、社員数を約3000人から4分の1にまで絞った後、消費者向けの直販から企業向けの卸売事業へと業態転換し、扱う商品もミシンから情報機器へのシフトを断行。一連の改革により、社員数はさらに2分の1まで絞り込まれ、約300人体制でスタートを切ったのが、21世紀に入った頃だ。人事総務部長の岡野哲也氏は、この時期の教育システム構築過程をこう説明する。
「大規模な改革の結果、現在の事業形態への転換は図れましたが、一方で社員の年齢分布に偏りが生じました。現在は50代と20 ~ 30代の社員数が多く、40代がぐっと減っています。そのため本来継承されるべき学びが途切れてしまったのです。また、業種業態の転換に伴う新たな技術や学びの習得が必須であるのにも関わらず、メンターとなる人材も不足していました。そこで教育投資を思いきって増やし、その一環として通信教育を導入したのです」
全社を挙げて通信教育に注力
組織改革に伴い中断していた新卒採用は2003年から再開され、それ以降の社員定着率は高い。定期的に従業員満足度を測り、教育施策の見直しを都度行っている点もその要因の1つである。社員研修について、人事総務部人事グループの玉木貴久氏は「入社後10年間はほぼ毎年研修を行い、3年に1回のペースで大きな研修も実施しています。もちろん通信教育も導入し、以前は修了者に受講料を半額補助していたのですが、2003年からは全額補助する制度に変えました」と力の入れようを語る。
2012年からは、年間2コースまで受講料補助を受けられるようになった。受講時期は、仕事の都合などに合わせて毎月申し込みが可能だ。各部門の責任者にはメンバーの受講状況が人事部から随時報告され、申込者が少ない部署では上司から部下への声掛けが行われる。社内の各部門が半年ごとに策定する目標の中には、通信教育に関する項目も含まれており、部門によっては、メンバーの受講率をグループの目標として設定するところもある。
「2013年から受講件数の集計を始めました。年間330件ぐらいの申し込みがあるので、契約社員も含めると全社員の8割程度が受講している計算です」(玉木氏)