世界で闘うリーダーになる 第3回 日本人ビジネスパーソンが 乗り越えるべき壁
「今、日本企業にはリーダーが足りない」――。そう話すのは、日立製作所でグローバル人財戦略を担った山口岳男氏。リーダーを増やすために、まずは人材開発の担当者一人ひとりが、自身がリーダーになる意識を持ち、努力する必要があるという。日本企業がグローバルで戦う方法とは。また、グローバルで通用するリーダーシップはどのように身につければよいのか。本連載では、氏がこれまでの経験で得た知見を交えて、5回にわたり解説する。
日本人に足りないもの
先月号では、このままでは日本のビジネスパーソンがグローバルなポジションを獲ることができなくなってしまうというお話をしました。では、グローバルなポジションでリーダーシップを発揮し、世界で闘えるようになるためにはどうすればよいのでしょうか。
まずは日本人のビジネスパーソンに欠けているもの、そして強化すべきものを明確にする必要があります。そのために「自己の相対化」、つまり外部の視点を持ち、外部の視点で自分を捉えることが大切です。
私は二度にわたりアメリカで仕事をした経験から、自分に欠けているもの、日本人に欠けているものを痛感しました。同じような経験や思いをした人たちと話をする中で、共通項がたくさんあることに気づいたので、紹介します。
●グローバルマネジメント力
一言でいえば、複数国における人、モノ、金といったいわゆるビジネスの全機能、ないしは一機能を特定の国からマネジメントする力です。日本人は、この「間接統治」が極めて不得手であると言わざるを得ません。我々が得意とするのは、目の前にいる人や、同じ敷地内、建物内、せいぜい国内の拠点にいる人を通じたビジネス、つまり「直接統治」のマネジメントだといえます。海を越え国境を越えた途端に、人もビジネスも直接統治のマネジメントの視界から消えてしまう。だからうまくいかないのだと思います。
グローバルでもそうでなくても、仕事にはステークホルダーとの協働関係の構築が欠かせません。相手が目の前にいるとは限らず、初対面の人であっても、電話会議やビデオ会議で“言葉”で関係を構築することが求められます。以心伝心や阿吽の呼吸は通じないと心得なければならないのです。ですから、言葉で関係を構築する努力をしたり、言葉で相手をモチベートさせインスパイアさせることが求められます。
●対立を恐れないリーダーシップ
日本人は、会議や交渉時に意見の対立やコンフリクトを恐れるあまり「沈黙」「遠慮」「配慮」「我慢」を優先させがちだと感じます。リーダーとしての立ち居振る舞いをしない限り、信頼され、リスペクトされることはありません。日本ではどんなに立派なトラックレコードを残しているような人でも、日本の行動様式を海外に持ち込んでしまうと、うまくいかないのです。言葉を武器にして関係を構築し、方向を示し、ワクワクさせ、コンフリクト時には説得もする。そんなリーダーシップを発揮することが求められているのです。