企業の研修施設に突撃! 研修効果を高める ラーニングスペース 第5回 AGC旭硝子
「空間設計」は、社員の学びを促進する重要な要素のひとつである―。そう語
るのは、オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の稲水伸行
氏である。特に企業が保有する研修施設には、研修効果を高め、学びを促進する
工夫があるはずだ。そこで本連載では稲水准教授が企業の研修施設をめぐり、
研修効果を高める工夫について解説する。今回は、AGC旭硝子の「AGCモノづ
くり研修センター」を訪ねた。
AGCモノづくり研修センター
出会いを誘発する光庭
壁一面のガラスが圧倒的な存在感を放っています。ガラスのファサードが迎えてくれるこちらの建物が、今回ご紹介するAGCモノづくり研修センターの研修棟です(写真1)。
「設立のきっかけは、熟練工の高齢化と団塊世代の退職に対する危機感です。技術技能を強化し伝承しようという目的で“人とモノのコミュニケーションによる新しい知の創造を生み出す空間づくり”をめざし、2006年に竣工しました」(AGCモノづくり研修センター シニアマネージャー 林英男氏)
研修センターが立地するのは、横浜市鶴見区の旭硝子京浜工場の一画。主に講義等を行う「研修棟」とモノづくり実習、窯の構造や化学品関連技術の操作方法などを習得する「実習棟」、そして2012 年に完成した「宿泊棟」がそびえます。
「研修棟では、新入社員研修、課長研修、リーダーシップ研修といった階層別研修、選抜・選択型研修などさまざまな研修を実施しています。年間100 回ほどの研修を行い、延べ3000 人の社員が利用しています。以前は研修というと中堅や若手社員を対象にしたものが多かったのですが、最近では53 歳、58 歳対象のキャリア支援教育なども行うようになり、ミドル・シニア層の出入りも多いですね」(林氏)
4階建ての研修棟の特徴は、中央にあるガラス張りの光庭にあるといえるでしょう(写真2)。全フロアを貫通しており、あますことなく自然の光を取り入れます。どのフロアにいてもこの庭を見下ろし、気分転換をすることができます。