寺田佳子のまなまな 第25回 社会活動家 湯浅 誠さんに聞く 「自己効力感が生まれる授業」
今回の「まなまな」のお相手は、法政大学現代福祉学部教授、湯浅誠さん。
「年越し派遣村」の“村長”、内閣府参与としての活躍を知る人も多いのでは。
東京大学在学中、ボランティア活動に目覚めて以来、長年にわたりホームレス支援や貧困問題解決に取り組んできた湯浅さんが、なぜ今、大学生を教えているのでしょうか?
社会を変えるため、若者に寄り添い、一緒に学び続ける彼の想いを聞きました。
僕は大学に“学び”に来た
「派遣切り」が世を騒がした年の瀬には“年越し派遣村の村長”に、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権下では“内閣府参与”に、そして、周りにやたらに気を遣い尽くしまくる「つくし世代」の若者が大学生になった今は“大学教授”に。いつもその時代の空気を鮮やかに映し出す場所で、一貫して格差と貧困問題について発言してきた社会活動家の湯浅誠さんが、今回の「まなまな」のお相手である。
「社会活動家っていうと、爆弾つくる人みたいでしょ?(笑) 欧米では『アクティビスト』は、課題解決に従事しているごく普通の人が使っている肩書なんですけどね」
どうやら「ちょっと理論武装しなくちゃ……」なんて構えていたことはバレバレだったようだが、その社会活動家が、なぜ大学に?
「かつてホームレス支援などで知り合ったボランティアの大学生たちは、自主的に活動に飛び込んで来た、『意識高い系』の学生たち。大学生全体の1 割にも満たない、特殊な若者だろうなぁ、と思っていたのです。ではフツーの学生たちはどうなのだろう。それを学びたくて大学に来たんです」
えっ? “教えに”ではなくて“学びに”来たんですか?
「ええ、フツーの大学生のいる場所に立って、彼らが見ている景色を一緒に見て初めて、僕にどんな支援ができるのか、分かるような気がして」
それが今から4年前のこと。イマドキの学生は、自分の学生時代とも、ボランティアの学生たちとも違うだろうと予想はしていた。予想はしていたが、「やっぱ、最初はひっくり返りそうなくらい、びっくりすることの連続でしたね」。
低年齢化する「忖度する関係」
例えば……。
1 年の学生が授業の後で質問に来た時のこと。何げなく、「また質問に来てね」と言ったら、「それはなかなか難しい」と口ごもった。「え、何が難しいの? 恥ずかしいとかそういうこと?」と聞いたら、理由はこうだった。教室移動の時もランチタイムも“仲良しグループ”と一緒に行動しているのに、自分だけ先生のところに来ると、「一緒にいるのが嫌なのかな」と他のメンバーに気を遣わせてしまう。そう考えると、ひとりで質問に来るのはなかなか勇気のいる選択だ、と言うのだ。入学してひと月ほどで、“空気をサキヨミする関係性”が出来上がっていたのである。
また、例えば……。