学び方改革3 ICTで「今でしょ!」学習 実務と結びついたマイクロラーニング環境と 「社会情動的スキル」の育成こそ鍵
インストラクショナルデザインやアドラー心理学を専門とする早稲田大学の向後千春教授は、
企業が整えるべき学習環境として、職場での課題解決のなかで必要なことを必要な時に学べるICT環境を、
そして、21世紀に向けて、子どもも大人も学ぶべきこととして、「社会情動的スキル」を挙げる。
それぞれ、どういうことなのか。学び方と教え方の未来を聞いた。
集合研修なら双方向な場に
―世の中の“学び方”に関する変化として、最近、感じておられることは。
向後千春氏(以下、向後)
私が日々接している大学生について言えば、昔に比べてまじめになっています。おそらく、すごく学ぶ学生とそうでない学生とに二極化しているのでしょう。授業の出席率も高く、真剣に学んでいます。
―インターネットなどで情報が簡単に手に入る時代ですから、単調な講義は人気がなさそうです。
向後
確かに、インターネットに置き換えられるような授業は、淘汰されていきます。知識やスキルを受動的に学ぶのではなく、その場で何かをつくる、参加者同士で対話する、自ら発表するといった「アクティブラーニング」(能動的な学習)への関心が高まっているのも、そのためです。
―最近の学生は、何を学びたいのでしょうか。そして、企業においては何をどう教えるべきでしょうか。
向後
学生たちが求めているのは、問題解決の方法と、そのために必要なスキルではないでしょうか。
企業でも、受講者を1カ所に集め、講師が一方的に講義をする集合研修は、減っていかざるを得ないでしょう。集合させるからには、インタラクションが起こる場を確保しなければなりません。講師のレクチャーは最小限にとどめ、問題解決をするために参加者同士が対話し、自分以外の多様な考え方を学ぶ。そうした研修は残ると思いますが、単なる知識やスキルの習得は、ネットに置き換わっていきます。
オンライン教材の整備は難しいことと思われるかもしれませんが、一度作れば繰り返し使えます。長期的に取り組む決心さえすれば、この移行は進むでしょう。
即時・ICTでの個別学習へ
―その他に、企業が社内の「学び方改革」をするとしたら、重要な点は。
向後
働いている現場での学習を効果的にできるようにすべきです。仕事と学びが同じ場所で、同時並行で起こるのが、最も効果的です。