寺田佳子のまなまな 第20 回 小学校栄養士 松丸 奨さんに聞く 全力を注ぐ給食づくり
今回の「まなまな」のお相手は、小学校で栄養士として働く松丸奨さん。
おいしい給食をつくるため、並々ならぬ熱意で日々研究を重ねる熱血漢です。
そのこだわりの強さは、「給食バカ」を自称するほど!
「給食なのに、なぜそこまでするんですか?」
その答えは、松丸さんがつくるおいしい給食そのものにありました。
「チーム給食室」を率いる!
東京都文京区の金富小学校にある、空き教室を利用した「ハッピーレストラン」。そのかわいいランチルームで、巨大なオタマを持ち、「400 人分の給食って、こんなふうに調理するんですよ」とポーズをキメるのは、今回の「まなまな」のお相手、栄養士の……というより“給食室の先生”として子どもたちに親しまれる松丸奨さんだ。それにしても、壁いっぱいに飾られたおいしそうな給食の写真といったら! ハート型にソースをかけたコロッケや、星形のゼリーが散った七夕のおそうめん、フルーツのカラフルな盛り合わせまで。こんなにハッピーな給食の世界は、いったいどんなふうに生まれるのだろう。
松丸さんの1日は午前3時半に始まる。毎朝4時半の始発電車に乗って、5時半には学校へ一番乗りだ。
5時半! いったいなぜ、そんなに早く学校へ?
「6時過ぎに配達に来る業者さんたちと、顔を合わせて話がしたいからなんです」
食材は調理員が受け取れば、それで済む。しかし、「きのうのリンゴ、とっても甘いって、子どもたちが大喜びでしたよ」と一言お礼が言いたい、子どもたちの笑顔を届けたい、そして業者さんも「チーム給食室」の大切なメンバーだと思っているキモチを伝えたい。だから早朝の「顔を合わす時間」を大切にしたいのだ。
6時半に7人の調理員がそろうとさっそく作業開始。まず、昆布・鯖節・鰹節で「出汁」をとることから始める。
そこからですか、給食づくりは!?
「そこからです(笑)。子どもが苦手な野菜も、コクのある出汁で調理すれば素材の旨味が活きて、塩分が少なくてもおいしくなるんです」
調理員さんに献立表を渡し、「よろしくお願いします」と言えば済むことかもしれない。けれど松丸さんは、「給食室は“ごはんをつくる工場”じゃありませんから」と、ここでも調理員との「顔を合わす時間」にこだわる。
「ボクのレシピは手間がかかる。調理員さんがご苦労されているのが分かるので、『チーム給食室』の先頭に立って頑張らないと申し訳ないんです」