
菊池健司氏
- 読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
- 1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。
ビジネスパーソンは今何をすべきなのか
生成AIが秒針秒歩で進化している今の時代、これから何が起こるのかはもはや神のみぞ知る領域なのかもしれない。
あと数年もすれば、生成AIはインターネットやスマホが浸透した時と同様に、普通のインフラになっている可能性が高い。
まだ見ぬ世界に私たちは突入していくわけだが、これからビジネスパーソンは何に取り組んでいくのがいいのだろうか。
1つ確実に言えることは、「何が起きても対応できるように、自分自身を成長させていくことが重要であることに変わりはない」ということである。
皆様は、生成AI時代に人間が磨き上げていくとよいスキルは何かと聞かれたら、何とお答えになられるだろう。
私がイメージする一例をざっと挙げてみると……
・顧客に必要不可欠と思っていただけるように「伴走者」としての「自分(自社)の価値」を向上させる
・自社課題はもとより、顧客課題を発見する力(もちろん解決する力も重要)
・生成AI時代だからこそ重要となる「考え抜く力」
・「組み合わせて」物事を考えるためのスキル
・「縦軸」の知識(自分の専門分野)のみならず、「横軸」の知識(ex.様々な業界で何が起こっているのかを知る等)の習得
等々
いずれのビジネススキルを習得するためにも、「勉強」は極めて重要である。
私たちは学び続けないといけない。
「ある日突然できるようになる」ということはよほどの天才を除いては、「まず、ない」と断言できる。
ただビジネスパーソンが学ぶべき領域は非常に広いので、「何を学べばよいのか」「どう学べばよいのか」で困っている方も多いと思われる。
そこで今回は、そうしたお悩みを抱える方にとって絶好の指南書となるに違いない素晴らしい1冊を紹介したい。
タイトルは、『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』。
私自身、全著作を「著者買い」させていただいているアタックス・セールス・アソシエイツ社長である横山信弘氏の注目の新刊である。
ここまで現状を的確に捉え、そして未来を見据えたうえで、ビジネスパーソンの学びについて体系立てて書かれている書籍の存在は本当にありがたい。
本書の構成
本書は、全4章で構成されている。
PART1:トップコンサルタントが教える戦略的勉強法とは?
多忙な社会人に対して、「仕事中勉強法」(=時間がない人が就労時間内に本気で取り組む勉強法)のポイントについて解説されている。
人材部門の方はよくご存知かもしれないが、「ポータブルスキル」の焦点を合わせる考え方は指針として非常にわかりやすいと思う。
また、やらない方が良いことも指南されており、「なるほど」とうなずかされる。
PART2:トップコンサルタントが日々実践している「コンセプチュアルスキル」勉強法
本章では、ポータブルスキルで提唱されている「仕事の仕方」=コンセプチュアルスキルと定義し、習得すべき8つのスキルについて、それぞれ解説されている。
次章以降もそうだが、スキル解説に始まり、なぜそのスキルが重要なのかを十分に理解させたうえで、横山氏の勉強法とワンポイントアドバイスが書かれている。
お読みいただくとわかるのだが、随所に出てくる図解がとにかくわかりやすく、私たちの理解を助けてくれる。
○8つのスキル
「仮説立案力」「論理思考力」「網羅的に考える力」「俯瞰力」「スケール推定」「フェルミ推定」「ダンドリ力」「説得力のある話し方」
いずれ劣らぬ重要なスキルである。
個人的には、改めて「スケール推定」の重要性について考えさせられた。
早速自己反省を踏まえ、足りない点を補っていきたいと考えている。
PART3:トップコンサルタントが日々実践している「ヒューマンスキル」勉強法
本章では、ポータブルスキルで提唱されている「人との関わり方」=ヒューマンスキルと定義し、習得すべき7つのスキルについて、それぞれ解説されている。
○本章で登場する7つのスキル
「心を掴む話し方」「共感力」「傾聴力」「質問力」「コーチングスキル」「交渉スキル」「マネジメントスキル」
個人的には「傾聴力」向上が今後のビジネスパーソンのカギになると睨んでいる。
ただ、もちろんこちらもいずれ劣らぬ重要なスキルばかりであることは言うまでもない。
PART4:トップコンサルタントが「職場以外で実践している」勉強法
もちろん、「仕事中勉強法」で全て学べればそれに越したことはないのだが、どうしても時間を創りながら、自ら取り組まなくてはならないこともある。
本章では、そうしたスキルを4つ紹介している。
○本章で登場する4つのスキル
「読書術」「デジタルスキル」「検索スキル」「練習法」
本連載は書評連載なので、当然横山氏の「読書術」には大注目している。
「水平読書」「垂直読書」なるほどと思わず膝を打つ手法を惜しげもなく公開してくれている(詳しくは本書にて)。
横山氏が「著者買い」している著者名も出てくるのでバリューが高い。
「デジタルスキル」は最先端のデジタルツールを使いこなす力であり、「検索スキル」は実は学ぶ機会が少ない重要なスキルである。
「練習法」は「わかる→できる」になるために欠かせないスキルである。
ビジネスパーソンにとって重要なポータブルスキルを磨くうえで欠かせない1冊
本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。
- 実際に大きな成果を上げているプロコンサルタントの「学び」の思考の背景を知る
- 横山氏の考えと自分の考えを比較しながら、「学び」を深める
- どうすれば、本書で紹介されている勉強法を自身に落とし込めるかを考える
- そして、「自分の従来の勉強法」に新たなピースを加え、さらに磨き上げる
本書は『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』というタイトルだが、もちろん、経営者、ビジネスリーダー、次世代リーダーをはじめ、全ビジネスパーソンが応用できるノウハウがふんだんに詰まっている。
後は、「やるか、やらないか」である。
毎日黙っていても、生成AIの進化に関する情報が耳に届く今の時代、私たちが出来ることはやはり”自分の幅を拡げていく”「勉強」だと思う。
本書を大きな手掛かりとして、2025年の「勉強」に意欲的に取り組んでいくことをお勧めしておきたい。
もちろん、人事部門の方々も必読の1冊である。