今週の“読まぬは損”

第211回『世界100ヵ国の旅で出会った人たちが教えてくれた人生で大切なこと』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

旅は道連れ、世は情け……それにしても世界は広い

読者の皆様はよく旅に出られるであろうか。

JTBの調査によれば、2025年12月~2026年1月の年末年始休暇に1泊以上の旅行に出かけた方の数は推計3,987万人(対前年102.5%)で、そのうち海外旅行者は100万人(対前年131.5%)とのことである。

コロナ禍を経験したことにより、「人生何があるかわからない。旅行も含めて、出来るときに出来ることをなるべくやっておこう」と考える方は増えたのかなと予想している。
私もその1人である。

個人的には、毎年のように海外に出かけていたことがあった。
特にスペインにはすっかり魅せられていて、街を歩いているだけでも自分にパワーがみなぎってくる。
幾度かの現地訪問を経て、ありがたいことに知り合いも出来た。

近いうちに、バルセロナでのサッカー観戦(新しくなった要塞カンプノウ)や2026年内にも完成するといわれているサグラダ・ファミリア聖堂への訪問は、還暦近い自分の人生において、これからの最高の楽しみの1つであったりする。

海外旅行といえば、外務省が先頃発表した2024年に発行されたパスポートの数は382万冊という。
同年末時点で有効なパスポートの累計は2,164万冊で、保有率はわずか17.5%という数字。
円安による渡航費用の高騰(これは大きい)や若者の意識変化などが背景にあるとされている。

このパスポート保有率の数字は、4〜5割の米国や韓国を大きく下回る。

世界から多くの旅人が訪れるように、日本には素敵な場所が数多く存在する。
ただ、経験上申し上げるのだが、世の中には、世界に出ないと、現地に行かないとわからないことが本当にたくさんある。
人生を楽しむためにも、可能な範囲で選択肢の1つに入れていただきたいと思う。

今回ご紹介する1冊は、世界での旅の経験を通じて、何ものにも代えがたい人生訓を得た旅人KAD(かど)氏による注目本。

KAD氏は建築士を辞め、移住先を探して世界中を旅している。
訪問国数 100カ国以上。そこで出会った人々との対話から、人生で大切なことを学んだ。旅先での出会いと発見をSNSで発信し、多くの反響をよんでいる。

○KAD氏Instagram

本書の構成

本書は、全4章で構成されている。
KAD氏と世界の人々たちとの出会い…お読みいただくとわかるのだが、一気に情景が拡がる感覚に陥る。

今回は、個人的に特に印象に残ったフレーズを1章につき、1つずつ紹介するが、全てのエピソードをどうか読み飛ばすことなく、お目通しいただきたい。
自分の人生指針につながる大切な言葉がきっと見つかる。

第1章:自分を解き放つ視点

本章は、イタリアで出会った哲学科卒のバックパッカーとの出会いから始まり、15名との出会いの物語が展開される。

12番目に登場するブルガリアの老画家との出会いで得た「若い頃は『自分探し』をしてたけど、今は『自分忘れ』をしてるよ。」というフレーズが胸に沁みる。
「自分を探すと世界が狭くなる。でも忘れると、世界が入ってくるんだよ」

第2章:人生を楽しむコツ 幸せの本質

本章は、タイの寺院のお坊さんから始まり、16名との出会いが描かれている。

20番目に登場するウニコ塩湖で出会った車を売って旅費をつくったブラジル人カップルの言葉
「物を増やすより境目を消そう。手放すほど、心の景色は広がる」
手放すことで出会うことができる景色、境目が消えた世界、そういう境地をこれからの人生のどこかでぜひとも体感しいと感じた自分がいる。

第3章:仕事と人生の知恵

人事部門の皆様には本章が特にお勧めである。
32番目のアメリカ人野生動物学者をはじめ、8名が登場する。

39番目に登場するポーランドの図書館で出会ったおじいさんの言葉があまりにも印象深い。
「本を読むのは心を借りること。でも借りてばかりじゃ、自分の心が薄くなる。だから感想を誰かに話すんだよ。話すことで、借りた心が自分のものになるんだ」

最近、読者の思いを知りたくて、書店はもちろんだが、図書館に行くことも増えた。
一介の書評家としても、心に染み入る言葉である。
できることなら、このおじいさんに会ってみたい。

第4章:困難を乗り越える方法

本章では、40番目に登場するタジキスタンで出会った登山ガイドをはじめとして、11名が登場する。
44番目に登場するフランスの巡礼路で出会ったバックパッカーの言葉が印象深い。
「人生は、道を選ぶことが本質じゃない。選んだ道をどれだけ愛せるかなんだよ」

50名にも及ぶ海外での素敵な出会いとエピソードが存分に展開される。

生成AI時代だからこそ、世界に飛び出し、「見聞」を得たい

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. KAD氏の旅を通じて、疑似体験をさせていただく
  2. 人生において重要な言葉を多く得る
  3. 自分のこれからの人生観につながる言葉を心に刻む
  4. 自分の頭の中に拡がる映像を大切にしながら、次に行く場所を探してみる

ラジオ番組で3年に渡り共演させていただき、個人的にも尊敬してやまないアナウンサーの榎戸教子氏は1年かけて世界一周されたご経験をお持ちで、この経験はご自身の人生にも大きな影響を及ぼしているという。

○(参考記事)Well-being有識者インタビューVol.31

本書を読んでいても、榎戸氏から教えていただいた世界の様々な情景を思い出してみても、やはり、自分自身で現地を訪れないと感じ取れない世界があることを改めて痛感する。

終章で登場する旅人KAD氏の本書の最後の言葉は
「次の景色が、あなたに優しくありますように」

何かを見つけたいと考えているビジネスパーソン、一歩前に進む勇気を得たいビジネスパーソン、多くのビジネスパーソンにこの素敵な1冊が届きますように……。

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