J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年11月号

心理学×企業調査で検証 パフォーマンスを高めるチーム開発 第1回 チームで成果を上げるために大切な要素とは

先行きが不透明で、人材も働き方も多様化する時代に突入している。そんな変化の多い時代でも、間違いなく言えることは、業績を上げるには「チーム力」が欠かせないということだ。
今連載では、九州大学と九州大学TLOが行ったフィールドリサーチを基に、パフォーマンスの高いチームづくりについて、全4回にわたりお届けする。

青島未佳( あおしま みか)氏
産学連携機構九州(九州大学TLO) 総合研究部門 部門長

産学連携機構九州(九大TLO)総合研究部門部門長。大学卒業後、日本電信電話(NTT)、アクセンチュア、デロイトトーマツコンサルティングを経て、2012 年1月より現職。人事制度改革、人事業務プロセス改革、グローバル人事戦略など組織・人事領域全般のマネジメントコンサルティングを手掛ける。

●暗黙知は通用しない

どのような組織であれ、大半はチームで仕事をしており、チームワークがうまく機能しなければ高い成果を上げられないことは明白だ。

かつて世界から称賛され、米国の企業などでも取り入れられてきた「日本的経営」の特徴のひとつは、チームワークである。だが、1990 年代に成果主義・個人主義の潮流を迎えると、日本企業の中でもチームの業績より個人の業績や成果を高めることを優先する傾向が強まり、“チームワーク”や“チームの力”が注目されることは少なくなった。

今はVUCA※の時代といわれ、グローバル化やM&A、少子高齢化の加速、労働市場の流動化など企業や組織を取り巻く環境はますます変化している。そんな中、多様な人材の活躍を推進するためには、日本流の同調主義的なチームワークや“言わなくても分かるだろう”といった暗黙知ベースのマネジメントスタイルは通用しない。トップダウンで決めた方針を現場が粛々と実行するのではなく、現場レベルでさまざまなアイデアを出し、改善・改革を自ら進めていく、そんなチームワークやチームマネジメントのスタイルが求められるのではないか。

このような課題認識の下、九州大学と九州大学TLOでは、10 社(約500組織・計4500人)にわたるフィールドリサーチを通じて、高業績を上げているチーム(高業績チーム)とそうでないチームにどのような違いがあるのか、高業績チームをつくるためには、どのようなマネジメントが必要なのか、という問いに対して、データ分析における解析とインタビューを基に、その答えを明らかにした。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)のこと。

[注]本研究で対象としているチームは、1チーム・3~ 20人程度で構成される目的を同じくした集合体であり、会社・事業部という組織単位ではないことを前提としている。

●高業績チームの4つの機能

本研究の結果、高業績チームには、①コミュニケーション(心理的安全)、②目標共有(ビジョン)、③相互協力(コラボレーション)、④チーム学習(ラーニングオーガニゼーション)の4つの機能が備わっていることが判明した(図1)。

ここで特筆したいことは、チームにこの4つの機能を備えるには、段階があるということだ。チームづくりは家づくりと同じで、どんなに上物がよくとも土台がしっかりしていないとすぐに崩れてしまう。その土台となるのが、①コミュニケーションである。高い成果を上げるチームには、土台となるコミュニケーションの基盤がきちんとできているのである。これはパス解析※という統計手法を用いて各要素を分析した結果からも明らかになっている(図2)。

※各要素間の因果関係を見つけ出す統計解析手法のこと。「相関分析」の場合、因果関係は不明だが、「パス解析」を行うことによって、どちらの要素が原因なのかを推定することが可能となる。

●土台は「コミュニケーション」

(1)“心理的安全”の重要性

だが、そのコミュニケーションとは、そもそも何か。ここでお伝えしたいコミュニケーションとは、単に情報共有や報連相ができているということではなく、「メンバー同士が遠慮することなく、お互いに自由に意見や要望を言い合える風土・環境」ということである。そのために必要なのは、何を言っても大丈夫だという“心理的安全(Psychologicalsafety)”だ。その重要性は、エイミー・C・エドモンドソンの著書『チームが機能するとはどういうことか』(野津智子訳/英治出版)や、ニューヨークタイムズ2016年1 月号の記事で「Googleのプロジェクト・アリストテレスが『チームの生産性を高める唯一の方法は心理的安全だ』と明らかにした」と紹介されていたことからも分かる。

メンバー同士が率直に自分の意見を言ったり、恐れを持たずにお互いに分からないことを質問・相談したり提案したりできる環境が整えば、チーム内で課題が発生した時に協力して乗り切ることができる。また、個人の新しいアイデアや知恵をチーム内に還元でき、チームの成果が上がる確率が高くなる。

逆に、このような環境が乏しいチームでは、リーダーや他のメンバーからどのように思われるのかということが気になり、本来言うべきことが言えない状態に陥ってしまう。ミスやエラーを指摘し合えなかったり、それらを他人のせいにしてしまったりする。さらに、他の人からどう思われるかというエモーショナルコストが増え、人間関係のストレスを増幅させることにもなる。

(2)“心理的安全”な風土づくり

コミュニケーションの基盤である心理的安全は、日本と米国では少し文脈が違うようだ。米国では多様性を認め、自分の意見を主張することは前提であり、リスクがある場面やアウェイな場合でも“反対意見”や自分の意見が言えるということが大切だ。しかし、日本の場合はそもそも多様性が低く、普段から“出る杭は打たれる”という風土や同調主義が根強いため、反対意見ではなくとも、特に上司に対して、または上司がいる場面で自分の意見を言わない・言えない傾向にある。

このように日本では、“何でも言い合える”ということは簡単そうで非常に難しい。前述のエイミー・エドモンドソンは“無能”“無知”“ネガティブ”だと思われるリスクが率直に話すという行為を妨げていると言っている。自分や自分の意見に確固たる自信がないと自分の意見を言いづらいことは世界共通だろうが、謙遜・謙虚であることが美徳とされる日本の価値観の中ではさらに、“でしゃばり”や“協調性がない”と思われたくないという心情が働き、率直にものを言う行為を妨げている。

このような中では、多少強制的にでも、チームのメンタルモデルとして“何でも言い合えることがよい”という環境づくりが必要である。例えばチーム内で以下のようなルールを決め、徹底することが有効だ。

・他人の意見・アイデアをもらったら必ずお礼を言う

・議論の場では他人の意見を頭ごなしに否定しない

・意見がある時には陰で言うのではなく、直接本人に伝える

これは、「チャレンジする」文化をあえて明文化することで、社員の挑戦を促す風土をつくり上げてきたリクルートグループの手法と似ている。

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