J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年03月号

女性のリーダー育成を阻む 「男女の役割分担意識」

今後の企業経営を支えるうえで、女性のリーダー育成は欠かせない。
しかし、日本は他国に比べて女性の活躍が進んでいないのが現状だ。
その原因はどこにあるのか。
女性の社会参加にまつわる国際比較データをもとに、
国内で女性リーダーが育たない環境とその背景について考察すると共に、
現状打破に向けての企業の課題を探った。

内海房子氏 独立行政法人 国立女性教育会館 理事長
独立行政法人 国立女性教育会館 理事長
1971年津田塾大学卒業後、NEC入社。2001年にNECソフト株式会社人事担当執行役員、2005年にNECラーニング株式会社社長。2011年7月から現職。著書に『私は、人事課長一年生』(日経連広報部)『もっと素敵にワーキングライフ』(大和出版)がある。

はじめに

女性リーダーの育成は、現在どの企業においても重要なテーマだが、国立女性教育会館(NWEC)では、1977年の設立以来、地域で活躍する女性リーダーの育成に力を入れてきた※。学びを通して女性が本来持っている能力を引き出し、地域のリーダーとしての自信を取り戻すことで、思い切って念願の事業を起こしたり、地元の議員に立候補したりと、NWECでの研修をきっかけに一歩前に踏み出したという女性たちは少なくない。

近年NWECでは、地域のみならず、組織で活躍する女性たちの育成に力を入れる時が来たと認識している。その取り組みの1つが、「企業を成長に導く女性活躍促進セミナー」である。地域レベルでの女性リーダーの育成経験を活かし、企業が直面する問題に真っ向から取り組むものだ。具体的には、NWECの調査研究からさまざまな国際比較データを紹介しつつ課題を整理し、議論を通して解決への糸口を探る、また、各社の女性リーダーの育成担当同士のネットワークを構築するなどの効果を狙っている。

今回は、これらの活動を通じて得られた、企業で働く女性のリーダー育成における課題について述べたい。

1 活躍が進む世界の女性たち

現在、日本女性の活躍の水準は、世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数(GGGI)で示される(142カ国中104位)通り、極めて低いレベルである。例えば、女性管理職比率の国際比較(図1)女性役員の占める比率の国際比較(図2)を見ても、世界の女性たちの活躍から日本が大きく水をあけられていることがわかる。さらに、世界各国では、女性の国会議員や首長、大企業のCEOも今や珍しくはない。女性が当たり前のようにトップに就いている。

米国の大学の女性学長の例を見てみよう。図3は1986年、2006年、2011年の女性学長の占める比率の推移を示す。この四半世紀の数値の伸びを通じて、米国全体のトップマネジメント層における女性の活躍の推移がうかがえる。例えばハーバード大学は、2007年から現在に至るまで女性が学長を務めている。また、マサチューセッツ工科大学(MIT)のような工学系の大学でも、2004年から2012年まで学長は女性だった。

その他、ペンシルバニア、ブラウン、UCデービス(カリフォルニア大学デービス校)など、筆者が調べただけでも50近くの大学で女性が学長に就いている。ハワイ、プリンストン、シカゴ、パデュー大学など過去に女性が学長を務めた例も含めると、その数はさらに増える。

一方、日本ではどうだろうか。86ある国立大学のうち、女性の学長は3名(お茶の水女子大学、京都教育大学、愛知教育大学)のみで、わずか3.5%。私立大学を含めた大学全体でも、女性の学長は9%に過ぎないのが現状だ。

ところで、世界の女性たちの活躍の動きは、いつ頃から始まったのだろうか。

図4は1970年から2013年までの各国の女性の労働力率の推移を示している。1970年頃は日本よりも女性の労働力率の低かった国が、この40年間で大きく伸びている。労働力率の向上に伴い、女性管理職の比率も上昇していることは明らかだ。

対する日本の推移は、他の国々の右肩上がりとは大きく異なり、この40年間ほとんど変化していない。何かの間違いではないかと他のデータも調査したが、やはり同様の結果である。40年の間に各国の女性の大学進学率が上昇し、日本は高齢化が進むなど、社会の構造が変化したことによる影響もあるだろう。しかし、この結果から見る限り、世界と比べて日本は本気で女性活躍の推進に取り組んできたといえるのか、疑問が残る。

2 日本と世界の女性の違い

次に、日本の女性の活躍がなぜこれほどまでに進んでいないのか、その原因を考えてみたい。戦後の日本の高度成長期を男女の役割分業で支えた成功体験に、その遠因があるのではないかと私は考えている。

戦後の復興期は生活そのものが困難を極め、家庭を支える専業主婦の力が必要だった。家庭の外では、男性を中心に昼夜を問わず必死で働くことが求められた。多くの日本人は、国の復興のために、男は仕事、女は家庭という男女の役割分担を積極的に受け入れ、その結果日本は、経済的に豊かな国に生まれ変わった。

しかし一方では、経済大国をつくり上げると共に、男女の役割分担意識が頑強なまでに人々の心をとらえていったのである。

図5は、男女の役割分担意識調査の国際比較だが、日本は男女共に固定的な役割分担意識が根強く残っていることが見てとれる。他の国々と比較しても、その差は顕著である。しかし、実際には専業主婦は減っており、共働き夫婦の数が片働き夫婦の数を上回り、さらにその差は広まる傾向にある。

そうした中、共働き家庭での役割分担はどのようになっているのか。

図6は、子どもの年齢別に夫と妻が仕事、家事、育児にそれぞれ費やす時間の変化を示したものである。夫は、子どもの年齢がいくつであろうと仕事に費やす時間に変化はない。ところが妻は、仕事の時間に対して家事や育児に多くの時間を充てていることがわかる。多くの日本人は、母親である女性が仕事をセーブしながら子どもの面倒を見るのが当たり前だと思っている傾向がうかがえる。

そして図7は、6歳未満の子どもを持つ父親の家事・育児時間を調査した国際比較である。日本の父親の家事・育児時間は他の国々と比べるとかなり少ない。子どもが小さい時でさえ、母親だけが面倒を見て父親は免除されている状況であり、かつ、そうした現象が見られるのは日本だけということがおわかりになるだろう。

3 女性リーダーの育成課題

これまで述べてきた日本独特の社会風土や男女の意識を踏まえ、ここからは企業における女性リーダーの育成について見ていこう。

(1)男女の意識改革が必要

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