J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2015年03月号

OPINION 2 出発点は、男女の違いと共通性を知ること 女性の「仕事軸」の確立と、「上司の意識改革・支援」にテコ入れせよ

女性リーダーの育成について、課題はどこにあるのか。
より具体的には、どんな施策が効果的なのか。
企業や組織に女性活躍推進をはじめとしたダイバーシティ経営のコンサルティングを行っている荒金雅子氏に聞いた。

荒金雅子(あらかね まさこ)氏
株式会社クオリア代表取締役。都市計画コンサルタント会社、NPO法人理事、会社経営等を経て、2006年より現職。ダイバーシティ推進の草分け的存在として長年にわた
り女性の能力・キャリア・リーダーシップ開発などの研修・コンサルティングを実践。また、組織開発の分野でも、学習する組織、U理論、アクションラーニング、ファシリテーションなどを取り入れたプログラムを開発・提供。『多様性を活かすダイバーシティ経営』基礎編・実践編(日本規格協会)等、著書も多数。
[取材・文]=赤堀たか子 [写真]=編集部

戦略的に活かす女性の視点

最初に、企業が女性リーダーを育てるべき理由として特に挙げておきたいことは、これが経営にとって重要な戦略である、ということだ。

これまで男性中心だった同質的な組織の、特に意思決定のプロセスに女性が加われば、視点や発想の幅が広がり、イノベーションも生まれやすくなる。また、組織の倫理観の向上という観点からも、女性が果たす役割は注目に値する。不祥事や不正、ハラスメントが専門のある弁護士によれば、公平・公正さに対する意識は、男性よりも女性のほうが高く、女性がホイッスルブロワー(内部告発者)となることが多いというのである。

さらに、女性は関係性を重視し利他性を発揮する傾向があるため、女性をリーダーにすると、職場のコミュニケーションや人間関係がよくなり、組織が活性化するとも言われている。実際、合併を機にダイバーシティ推進を加速したIT企業では、社内から、「風通しがよくなった」「意見を言いやすくなった」という声が多く聞かれるようになったという。

まず男女の違い・共通点を知る

では、どうすれば女性リーダーは育つのか。私は、そのためには、会社や管理職側がまず、男女の持つ違いと共通点をしっかりと理解し、配慮すべきポイントや、公平に扱うために必要なことを学ばなければならないと考える。

日本の組織の中には、依然として、「男は仕事、女は家庭」という役割分担意識があり、リーダーも男性の役割だという認識が根強く残っている。また、女性の側も、「男性が主で女性は従」という考えや、仕事と家庭の両立への不安があり、「自分はリーダーにはなれない、向いていない」、と思い込んでいる人が多い。

結婚や出産、育児などのライフイベントの影響は、女性のほうが圧倒的に受けやすいのは確かだ。日本企業の多くは、いまだに長時間労働を前提とした男性中心の制度や仕組みで成り立っている。家事・育児などによる時間制約を持つ女性にとって、このような状況で責任ある仕事を担ったり、男性並みに活躍するというのは非常にハードルが高い。

加えて、女性と男性では、思考や行動パターンにおいても違いがある。

一般的に男性には、競争意識が強くプロセスよりも結果を重視する人が多く、女性は共感力や協調性が高くプロセスを重視する人が多いと言われる※1。また男性は、仕事で責任を果たす「仕事軸」(仕事に対する忠誠心・覚悟)に重きを置く傾向があるのに対し、女性は、自分の価値観や生活全体のバランスを図ろうとする「自分軸」を重要視する傾向があるともいわれる。

このように女性と男性とでは、置かれた環境や思考・行動パターンが異なるため、女性リーダーの育成を考える際にも、それらを考慮する必要がある。

21世紀のリーダーと女性的資質

書籍『女神的リーダーシップ』(プレジデント社)に、リーダーシップについて興味深い調査結果が紹介されている。

世界13カ国から抽出した6万4000人(消費者や企業人)のうち、半分の3万2000人に「協力的」「勇敢」といったリーダーシップの資質125項目について、それぞれ「男性的」「女性的」「どちらでもない」のいずれに該当するかを聞いた。そして残り3万2000人には性別と関連づけずに示し、リーダーや幸せな人生を送るためにそれぞれの資質がどれだけ大切かを聞いた。すると、前者の調査で女性的であるとされた「共感力」「柔軟性」「利他性」などの項目が、後者では「リーダーに必要な資質」として、特に上位にあげられたというものだ。

この調査から言えることは、リーダーに必要な資質には女性的なものも多く含まれていること。むしろ女性的な資質こそがリーダーには不可欠であるということだ。女性たちは自信をもって本来の自分らしさを活かしたリーダーシップを発揮すればよいのである。

施策① 働きがい重視の仕組み

以降は、具体的に必要となる施策について紹介する。1つめは、女性の働きがいを重視した仕組みづくりである。

最近は、育児休業制度や短時間勤務制度など、ライフイベントに対応した施策を充実させる企業が増えており、女性が働きやすい環境はかなり整備されている。中には、子どもが小学校3年生を終わるまで時短勤務が可能な企業もあり、手厚すぎる施策はかえって復帰後のキャリアアップを阻害するのでは、という声も出始めているほどだ。

こうした制度は、仕事と家庭の両立には貢献しているが、一方で、女性たちが「働きがい」を感じ活躍する土壌をつくり出しているかというと、そうなっていないことが多い。

というのも、日本企業は依然として、“仕事の質(成果)”よりも“仕事量(時間の長さ)”で評価する傾向にあるからだ。そのため、意欲的で就業時間内にしっかりと集中して仕事をするものの、育児のために残業や休日出勤ができない女性は、時間的制約があるというだけで評価されにくい状況にある。結果として、そうした女性たちは働きがいをなかなか感じられず、能力以下の仕事に甘んじたり、会社への不信感を募らせたりしてしまう。

女性たちがリーダーとして育つためには、ライフイベントを考慮しつつ、時間等の制約が不利にならないような、評価や時間成果が見えやすい仕事のアサイン等を行うことが重要だ。仕事を時間や量ではなく、質で評価することもその1つだろう。

この点で画期的なのはカルビーの取り組みだ。同社は、“短時間勤務の執行役員”を誕生させた。まさに、「労働時間ではなく成果で評価する」方針を示したといえよう。

なお、評価や処遇に関しては、「マイクロインイクイティ」(小さな不公平)があることを忘れてはならない。一般的に日本企業では、同じ程度の能力の男女がいた際、仕事のアサインや評価は男性が優先されがちである。しかし女性リーダーを育成するには、意図的に女性を優先するポジティブ・アクションを行う配慮も求められる。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:2,315文字

/

全文:4,629文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!