OPINION 2 出発点は、男女の違いと共通性を知ること 女性の「仕事軸」の確立と、「上司の意識改革・支援」にテコ入れせよ
女性リーダーの育成について、課題はどこにあるのか。
より具体的には、どんな施策が効果的なのか。
企業や組織に女性活躍推進をはじめとしたダイバーシティ経営のコンサルティングを行っている荒金雅子氏に聞いた。
戦略的に活かす女性の視点
最初に、企業が女性リーダーを育てるべき理由として特に挙げておきたいことは、これが経営にとって重要な戦略である、ということだ。
これまで男性中心だった同質的な組織の、特に意思決定のプロセスに女性が加われば、視点や発想の幅が広がり、イノベーションも生まれやすくなる。また、組織の倫理観の向上という観点からも、女性が果たす役割は注目に値する。不祥事や不正、ハラスメントが専門のある弁護士によれば、公平・公正さに対する意識は、男性よりも女性のほうが高く、女性がホイッスルブロワー(内部告発者)となることが多いというのである。
さらに、女性は関係性を重視し利他性を発揮する傾向があるため、女性をリーダーにすると、職場のコミュニケーションや人間関係がよくなり、組織が活性化するとも言われている。実際、合併を機にダイバーシティ推進を加速したIT企業では、社内から、「風通しがよくなった」「意見を言いやすくなった」という声が多く聞かれるようになったという。
まず男女の違い・共通点を知る
では、どうすれば女性リーダーは育つのか。私は、そのためには、会社や管理職側がまず、男女の持つ違いと共通点をしっかりと理解し、配慮すべきポイントや、公平に扱うために必要なことを学ばなければならないと考える。
日本の組織の中には、依然として、「男は仕事、女は家庭」という役割分担意識があり、リーダーも男性の役割だという認識が根強く残っている。また、女性の側も、「男性が主で女性は従」という考えや、仕事と家庭の両立への不安があり、「自分はリーダーにはなれない、向いていない」、と思い込んでいる人が多い。
結婚や出産、育児などのライフイベントの影響は、女性のほうが圧倒的に受けやすいのは確かだ。日本企業の多くは、いまだに長時間労働を前提とした男性中心の制度や仕組みで成り立っている。家事・育児などによる時間制約を持つ女性にとって、このような状況で責任ある仕事を担ったり、男性並みに活躍するというのは非常にハードルが高い。
加えて、女性と男性では、思考や行動パターンにおいても違いがある。
一般的に男性には、競争意識が強くプロセスよりも結果を重視する人が多く、女性は共感力や協調性が高くプロセスを重視する人が多いと言われる※1。また男性は、仕事で責任を果たす「仕事軸」(仕事に対する忠誠心・覚悟)に重きを置く傾向があるのに対し、女性は、自分の価値観や生活全体のバランスを図ろうとする「自分軸」を重要視する傾向があるともいわれる。
このように女性と男性とでは、置かれた環境や思考・行動パターンが異なるため、女性リーダーの育成を考える際にも、それらを考慮する必要がある。