J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年03月刊

ワーク&ラーニングスペース最前線 第11回 日本通運「NEX-TEC芝浦」 (東京都・港区)

どのような空間ならば、「学び」は促進されるのか。
オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の稲水伸行氏が
企業の研修施設をめぐり、学びを促進させる工夫を解説する。

東京大学大学院
経済学研究科 准教授
稲水伸行氏

1980年広島県生まれ。2003年東京大学経済学部卒業。
東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員・特任助教、筑波大学ビジネスサイエンス系准教授を経て現職。
経営パフォーマンスを高めるオフィスについて研究を行う。

[写真]=中山博敬、日本通運提供

幅広い研修に対応する施設を

日本通運の研修施設「NEX-TEC芝浦」は東京湾沿いの芝浦ふ頭駅から徒歩5分のところにある。2010年設立の7階建てで、宿泊施設も整う研修施設だ。

「2000年に伊豆に設立した研修施設は、技術的な研修を行うことを主な目的としています。一方、NEXTEC芝浦は、各地に集まっていた研修施設を集約し、グローバル系やコミュニケーションをとりながら行う研修など、幅広いスタイルの研修に対応できる施設として設立しました」(NITTSU グループユニバーシティ課長 赤木和司氏)

1Fには食堂やスタッフルームがあり、主に2階・3階が研修フロア、4階~7階が宿泊フロアとなっている。象徴的なのが、2015年にリニューアルした2F の「FUTURE CENTER」(右ページ上写真)だ。幅広い研修スタイルに対応する、未来志向の空間となっている。さっそく紹介していこう。

新しい発“創”を生む場へ

もともと他社と合同で研修や勉強会を行うことが多いという同社。そのようなときなど、受講生がより能動的に参加できる空間をつくろうということで、完成したのがFUTURECENTER だ。

「講義を一方的に聞くばかりではなく、研修生同士や時には外部の人ともコミュニケーションをとって、新しいアイデアにつなげてほしいという思いで設立しました。研修生の自主性に任せて運営していくことを目指しており、一般の研修室とは違うフレキシブルで自由度の高い空間です」(赤木氏)

FUTURE CENTERは、円形のフリースペース「IRORI(いろり)」とレイアウト自由な「KURUMAZA(くるまざ)」、半個室の「ANAGURA(あなぐら)」という3つの空間から成る。

「IRORIは、互いにインスピレーションを受け、想像をかき立てられるよう、輪になって対面できるオープンスペースです。KURUMAZAは、1人用机を自在に動かして、創造的な対話につなげる空間です。舞台をレイアウトして、プレゼンテーションを行うことも多いですね。ANAGURAは、アイデアを生み形にしていくための半個室。集中して議論を深めることができます」(NITTSU グループユニバーシティ 係長 武山智乃氏)

その他、2階・3階には、研修室とディスカッションルームがある。研修室は全4室で、敷居を外すと最大300名収容可能だ。

「これまでは紙の資料を使って研修を行っていましたが、この4月から、タブレットを使った研修のデジタル化を進めています。講師が画面を動かすと、研修生の手元の画面も連動して動くので、研修がスムーズに進みますし、紙のロスもありません。タブレットは約200台用意しており、全国にも貸し出しています。東京には行けないけれど研修は受けたいという人が参加可能になったという点でも、デジタル化は意味があると思っています」(武山氏)

収容人数10人ほどのディスカッションルームは全5部屋で、グループに分かれて作戦会議をしたりアイデア出しをしたりするのに使用する。

歴史を大切にした空間も

4階~7階には4フロアにわたり全108室の宿泊室が設置されている。ビジネスホテルのシングルルームタイプのモダンでシンプルな造りだ。また、各フロア中央には、靴を脱いで上がれる掘りごたつ式の談話室が備えられている。

「1泊の研修から、半年ほどかけて行う長期の宿泊研修もあります。宿泊研修は、日中の研修の後も交流を図ってほしいという狙いがあり、このような空間を用意しています。別の研修を受けている人も含めて、様々な人と交流を図ったり、お酒を持ち込んで、遅くまで話をしている人も少なくありません。個室にテレビをつけていないのも、この談話室に集まってコミュニケーションをとってほしいという目的があるからです」(赤木氏)

宿泊フロアの壁には、モノクロの写真が並ぶ。これは同社の歴史的に重要な出来事を撮影した貴重な記録写真だ。

同社の歴史に関する掲示は、その他研修施設の至るところで目にすることができる。たとえばエレベーターの壁にも初期のカーフェリーなどの写真が掲示されていたり、3階には同社の歴史が一覧でまとめられたパネルが目をひくところに掲示されている。また、フリースペースには館内に展示されたパネルがまとめられた冊子が備えられ、研修生は自由にページをめくることができる。

「歴史に関する写真は、研修で使うことも少なくありません。自社の歴史、その重みを知ってもらうことは、研修生の研修に向かう心構えを養うためにも、とても大切なことだと考えています」(赤木氏)

第2回 ワーク&ラーニングスペース最前線 ラーニングスペース研究会レポート【番外編】

オフィス学から見るラーニングスペース(LS)

稲水 伸行氏 東京大学大学院 経済学研究科 准教授

今後のオフィスに求められること

私が研究しているオフィス学が扱うのは、のような範囲です。オフィス学というと、デザインなどハード面の印象が強いかもしれませんが、オフィス・デザインは、HRM デザイン、IT デザインと相互作用しています。これら「ワークプレイス」に関する分野と「ワークスタイル」に関する分野がかかわりあいながら、最終的には組織力の向上につなげる。それが、オフィス学の考え方です。

オフィス学の研究を進めるなかで、私がこれからのオフィスに求められると考えるのは、「レバレッジの効いたオフィス・デザイン」です。具体的には、下記の3点が挙げられます。
・経営・従業員のニーズの充足――いかにコストを削減するかではなく、いかに利益を上げるのかという視点をもつこと。
・多面的なニーズの充足――プロフェッショナル人材、多様な人材の関心を得る施設にすること。
・効果的に経営成果につなげる――少数のオフィス・デザインで複数の機能、多面的なニーズを充足させること。

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