OPINION 1 カギは「思い込み」の解消と、2つの施策 優秀な女性のやる気を維持し ロールモデルを増やしていくには
女性たちの中からリーダーを育てていくには、多くの場合、問題が立ちふさがる。特にここで取り上げるのは、ライフイベントに関係した休職や時短時期をどう乗り越えるのかということと、謙遜したり、躊躇したりする女性たちの意識変革である。
そこで、働く女性の能力発揮に詳しい牛尾教授に、先進事例の共通点を含めた、女性リーダーを育む施策の秘訣を聞いた。
マクロとミクロな育成理由
「女性リーダーの登用・育成」が、ここ数年、特に盛んに言われるようになったのは、国の政策によるところが大きい。その狙いは、「M字カーブ」と呼ばれる、30 代~ 40 代半ばを中心に約345万人いるとされる潜在労働力の雇用を含めた、女性の活躍による経済効果だ。
例えば、日本国内の女性就業率が男性並みに高まった場合の潜在的GDP増加率は13%近く(ゴールドマン・サックス調査2014 年5月より)に上るなど、女性の活躍は日本経済に対しプラスに作用するという試算が、国内外を問わず多く発表されている。
こうしたマクロ的データからも、国を挙げて女性の活躍を進める必要があることはよくおわかりだと思う。
しかし、それ以上に、企業経営や実際に働く私たちの、いわばミクロ的なレベルからも、女性が活躍できる環境づくりには、さまざまなメリットがある。
企業から見たメリットとは、女性に限らず多様な人材を活用する「ダイバーシティマネジメント」による効果だ。
さまざまな立場や価値観を持つ人々が集まり、それぞれの能力を発揮できる組織は、社内の活性化やイノベーションをもたらす可能性を秘めており、競争力の強化につながる。さらに、経営層に占める女性役員の割合が投資家からの評価に影響するなど、資金調達や信頼性の面でも、多様な人材が活躍できる組織づくりを無視することはできない。実際、仕事で海外に出向いた際、自社のダイバーシティ経営が進んでいないことに対し、恥ずかしい思いをされた経営者もいると聞く。
そして私が今、特に伝えたい、企業が注目すべき理由は、「働く人々の価値観の多様化」への配慮だ。
かつてのように、「男性は働き、女性は家庭を守る」といった、性別で切り分けられた画一的な「幸せのかたち」は、もはや実情に当てはまらない。仕事に対する考え方も、性別を問わず、一人ひとり違うものだ。例えば同じ仕事でも、必要に迫られて仕方なくこなすのと、家庭との両立は大変だが意欲的に取り組むのとでは、生産性は違っているはずだ。
企業には、こうした社員一人ひとりの「幸せのかたち」と向き合いつつ、仕事への意欲や能力を上手に引き出して経営につなげることが求められているのである。
立ちはだかる「思い込み」
女性リーダーの育成が必要だと、企業側が感じている一方、実際の登用はなかなか進んでいないようだ。その原因には、2つの「思い込み」があると考える(図1)。