テクノロジー|AI採用 面接は1回だけ データに基づいた分析で採用の精度を高める 進藤竜也氏 人的資産研究所(セプテーニグループ) 代表取締役
今や様々な領域で活用が広がっているAIだが、HR 領域も例外ではない。
なかでも、採用の過程でAIを活用する「AI採用」の導入が進みつつある。
早くからAI採用を導入してきたセプテーニグループの人的資産研究所 代表取締役の進藤竜也氏に、
AI採用の概要やメリット、セプテーニグループでの活用例などについて聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=セプテーニグループ提供
データ分析だけでなく採用のアシスタント的存在に
採用活動にAIを活用する「AI採用」という言葉を耳にする機会が増えている。この流れに先立ち、約10年前からAIを採用に取り入れてきたのが、デジタルマーケティング事業などを展開するセプテーニグループだ。同社で人事データをAI等を用いて専門的に研究する株式会社人的資産研究所の代表取締役である進藤竜也氏は、AI採用について次のように説明する。
「AI採用は、もともと蓄積された人材データを基に機械学習などでAIに推論・予測させる形での活用が多かったように思います。たとえば、特定のデータを持った候補者が、入社後にどのように成長できるかを予測させる、といった使い方などがあります。それに対して近年のAIは、より人間に近い“採用アシスタント”のような存在に近づきつつあるように思います。以前は構造化されたデータしか取り扱いにくい状況でしたが、生成AIの発展もあり、画像や自然言語なども理解して推論や業務に役立てられるようになっています。かつてのように分析だけでなく、チャットボットによる応募者との会話や、候補者をピックアップして連絡を取り面接を調整するなど、コミュニケーション領域においても活用されるようになってきている印象があります」
「人材育成方程式」に基づき人事データを蓄積して分析
セプテーニグループが採用活動に早くから導入してきたAIの活用とは、どのようなものだろうか。
「当社では、過去から蓄積してきた様々な人事データを採用に活かすためにAIを活用してきました。具体的には、当グループの社員の過去の実績を基に、どのような人材が活躍できるのかをAIの力を借りて分析・予測し、採用担当者が意思決定の参考にしたり、さらに候補者の方にその分析内容をフィードバックして、入社を決めるにあたっての不安を解消したり、入社後のイメージがしっかりとできるような情報提供を行うことに役立てています」
同グループのAIを活用した採用の根底にあるのは、「人材育成方程式」(図1)という考え方だ。
「当グループでは個人の成長を最大化することが企業価値の向上につながると考えています。個人の成長(G)には、本人の個性(P)だけでなく職場環境(E)も大きく影響します。環境を構成する要素は、人間関係を表すチーム(T)と、仕事や経験(W)です。成長を高めるPとE(T+W)の条件を見いだし、その人に適した環境を整えてあげることで、成長する確度を高めることができると考えています」
このコンセプトのもと、同社ではデータを活用した採用に長年にわたり取り組んできた。その過程で進化したAIを活用するようになったことで、データ分析も飛躍的に向上したという。
同社が採用において活用するデータは、大別して2種類ある。1つは、履歴書の情報や適性検査の結果、面接時の評価など採用プロセスで得られる情報。そしてもう1つは、入社後にどのような環境でどのようなパフォーマンスを発揮したかという入社後の情報だ。この2種類の情報をセットで蓄積し、AIで分析することによって、自社との相性がわかるという。